卯月
さまざまな季節が入り混じる4月。
菜の花や芝桜などの花々が咲き乱れる一方、雪の壁を縫うように走る山岳観光道路の開通が同じ日のニュースになったりします。
本来ならウキウキ、ワクワクする時期のはずが、ことしはなぜか気が急いて仕方がありません。
原因は桜の開花。
山形の開花宣言は例年4月中旬です。
それがなんと3月31日に宣言が出されました。
山形地方気象台が観測を始めたのは1953年(昭和28年)。
半世紀を超える歴史の中で3月は初めてで、昨年より11日早いということです。
記録的な早さだったわけですが、桜の開花は野菜作りをしている人たちの作業の目安にもなっています。
もっとも知られているのが、ジャガイモの植え付け。
比較的冷涼な気候を好むジャガイモは、桜の開花期に種芋を植え、酷暑が訪れる前に収穫します。
その他にも、いろいろな野菜の種を蒔くゴーサインでもあります。
しかし本当にスタートしていいの、と「?」マークが浮き沈みします。
昨年は4月中旬に作業を始めたのは良いが、30日に雪が降ったのですから。
ようやく地表に顔を出した芽は寒さにそれほど強くありません。
まして強力な霜などに襲われれば極めて強いダメージを受け、せっかくの苦労が水の泡に帰してしまいます。
模様を見ていると、最高気温が20℃以上の日が3、4日続いたあとに、いきなり10℃前後まで下がってくるというのを繰り返しました。
その上最低気温が0℃近い日も。
霜注意報も頻繁にでます。
本格的な農家ならそれ相応の設備もあるのでしょうが、趣味に毛が生えた程度ではそこまで手が回りません。
作業という車のアクセルを踏むべきか、ブレーキを踏むべきか実に悩ましい日々が続きました。
シーズンになれば駐車場の半分近くに野菜の苗が並ぶホームセンターを時折幾つか巡りましたが、中旬になってもほとんど動きがありませんでした。
やはりブレーキが正解か。
それにしてもこの暖かさならアクセルなのでは、と迷いの幅は広がるばかり。
「季節の移ろい」という言葉からは情緒豊かでどこかゆったりしたイメージを受けますが、昨今の「移ろい」はまるで録画の早送りのようです。
人間も気温の急激な変化についていくのが大変ですが、植物の世界にも戸惑いが。
旬の味を楽しもうとわが菜園の片隅にウドやコゴミ、アケビなどの山菜を植えてあります。
ほんの箸休め程度の量しか収穫できないささやかなものです。
いつもなら5月の大型連休の後に顔を出すワラビが今月中旬に2本出て来ました。
ところが、10㌢ほど伸びたところでそのままストップ。
仲間も顔を出しません。
似たようなことはアスパラにも。
偵察員のようなのがいるんですかね。
「やはり、早すぎたかも。もう少し待って」と伝えているのかもしれません。
新型コロナにかかわるさまざまな規制が解除され、各地の祭りなど多くの催し類が復活しました。
人々の交流も活発になり、急速に以前の生活が戻ってきているようです。
これは嬉しい限りですが、気象は異常さを増すばかりのように思えて仕方がありません。
いつかは四季のはっきりした穏やかな日本に戻ってほしいものです。