「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(古今和歌集)。
「処暑」を迎えたのですから、こんな忍び寄るような季節の変化を感じたいのですが、どうもそうはいかないようで。
わが菜園の野菜たちは、ようやくいつもの夏がやって来た、と感じたのか一斉に動き出したのです。
7月の平均気温は観測史上最高だったとか、山形周辺の降雨量は観測開始以来最少だったとか、7月といわず5月ころから異常な天候が続きました。
例年のごとく種を蒔き、苗を植えたにもかかわらず、ナスやオクラなどはひざ丈くらいでストップし、トマトやキュウリはなかなか花を咲かせません。
6月ころまでは、土づくりか、肥料の問題か、水不足かなどいろいろ考えてそれらしい対応もしましたが、7月に入りはっきり高温障害ということが分かりました。
雨が降らないので、地面に熱が溜まるだけ溜まり、相当に環境が悪化していたのですね。
枯らすことさえしなければいずれ何とかなるのではないか、と藁にも縋る思いで潅水だけは欠かさずやりました。
8月に入り地表温度が50℃を超す状態になると雑草も枯れ始めたのです。
さすがの雑草も枯れるんだ、など妙に感心してしまいました。
そのころになると県内各地の神社で雨乞い神事を行ったというニュースを目にするようになります。
それが奏功したんでしょうか、5日ころから雨が降り出しました。
文字通り干天の慈雨。
生物が一気に息を吹き返したようでした。
1週間あまり断続的に降ったこともあり地表の温度がぐんと下がったのでしょう。
地面が熱過ぎて伸びられずにいたカボチャやスイカ、メロンなどが一斉に動き始めたのです。
蔓が這い出し、受粉した雌花の果実も膨らみが目立つようになりました。
ナスやオクラもぐんと背が伸びました。
つい数日前まで息絶え絶えになっていたとは思えないほどです。
本来なら5月から7月にかけての景色が今月下旬になってようやく訪れたのです。
長期予報では北日本はしばらく平年より気温が高いということですから、スイカやメロンを味わえる日が来るかもしれません。
どんな味かはともかくちょっと楽しみでもあります。
四季が日本の気候の特徴だったはずですが、3季か5季になりそうな気配が濃厚です。
「夏が終わるとそのまま冬と感じられるようになる可能性も…」といった気象関係者の話がラジオから流れて来ても驚かなくなった自分に驚きました。
恐らく近い将来、猛暑夏または酷暑夏の両側に夏をはさんで冬の3季か、上手くするとかすかに春と秋が残る5季にかわるのではないでしょうか。
俳句の季語なんてどうなるんでしょうね。
ふとそんなことが浮かんできました。
(2025/08/31 辻蕎麦HP)