「ちょっと実の数が少ないような気がする」。
わが菜園近くの畑で熱心にサクランボの木を観察していた知人に声を掛けたら、こんな答えが返ってきました。
その数日後、県さくらんぼ作柄調査委員会が今シーズンの予想収穫量を発表しましたが、平年に比べて20%~28%少なくなりそうだとか。
昨年は極端な高温で痛めつけられ、今年は低温で結果数が少ないとは。
2年続けて大きな打撃を受けそうです。
実の数が少ない原因は開花期の天候不順。
サクランボの受粉は蜂の媒介によることが多いのですが、低温続きで活動が鈍かったようです。
蜂の行動が活発化するのは18℃以上で、20℃から25℃が最も盛んといわれています。
しかし開花期の4月中旬から5月上旬にかけて平均気温が15℃に満たない日が多く、18℃を超したのは今月中旬以降に数日あっただけ。
あれだけ暑かった昨年とはうって変った気候でした。
菜園での作業中も肌寒さを感じることが多く、例年に比べて蝶や蜂は少ないし、そのほかの虫たちもあまり目立ちません。
野菜の成長も遅いような気がします。
晴れ渡った月末の昼近く、車で郊外を走っているとフロントガラス越しに見事なほど全山をさらしている月山が見えました。
そして朝日連峰の白い輝きも。
青空とのコントラストが実に鮮やかです。
ふと東に目を向けると奥羽山脈の上にはボリュームたっぷりの積乱雲が連なっています。
えっ、もう夏。
そういえばことしも5月ならではの風景に会いに行けずじまいだった。
突然そんな思いが沸き上がってきました。
数年前からいずれはと考えていた5月ならではの風景、それは「雪紅葉」と「水没林」、そして「白いハンカチ」です。
西川町の県立自然博物園ネーチャーセンター周辺のブナの自然林。
芽吹き始めると、その芽を包んでいた赤い皮が残雪の上に散ってきます。
これが「雪紅葉」で、月山の春の風物詩です。
萌黄色に染まった木々を透かしてみる青空、足元には白の世界に赤の点々が果てしなく広がる様子は、想像しただけで爽快な気分になります。
飯豊町の白川湖では、雪解け水で水位が上がると、岸周辺のシロヤナギの幹の部分が水面下に沈みます。
周囲の残雪と共に湖面に映る新緑の葉をつけた枝が広がる「水没林」は一服の絵のようです。
「白いハンカチ」は山形市のやまがた森林と緑の推進機構の敷地にあります。
中国の高原が原産地のミズキ科の樹木ハンカチノキ。花
びらの下部に苞と呼ばれる特殊な葉が2枚ついています。
普通の葉よりはるかに大きく、しかも花と同じ白色なので、遠目にはまぎれもなくハンカチのように見えます。
国内では極めて希少なのだとか。
異常が常態化し、いずれ春夏秋冬は姿を消して夏と冬だけの「二季」になるのではないか。
こんな冗談が本気に思えてくるような気候が続いています。
「四季」が薄れてきているだけになおのこと、来年こそは「5月の風景」に会って「風薫る」を存分に味わいたいと思っております。