「最新記事」カテゴリーアーカイブ

2025年 2月~3月号 辻蕎麦便り

先月「雪国山形」の「雪国」を返上しなきゃなどと書いた途端に、それこそ「どん」と音がするくらい降ってきました。
大寒になっても山形としては雪が少なく、暖かめだったのでひょっとしたらと思ったのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
まさか立春とともに最大級の寒波と大雪がやってくるとは。
天がどこかで辻褄を合わせようと虎視眈々と狙っていたとしか思えません。
先月末の山形の市街地はほとんど白い世界が姿を消していたのに、いきなり60㌢近い積雪に。
慣らし運転がなかった分だけ除雪作業はきつく感じられました。

 県内全体がすっぽり雪の下に埋もれてしまいました。
気象庁のデータで青森県酸ヶ湯と豪雪全国一を競う大蔵村肘折は23日に336㌢を記録。
以前、3㍍超えの時期に肘折温泉を訪ねたことを思い出しました。
路面はきれいに除雪されていますが、運転席から見える空はうず高い両側の雪の壁にさえぎられてきわめて狭く、異次元の世界に迷い込んだよう。
交差点のカーブミラーなどはすっぽり埋まっています。
同じ雪国の山形市周辺でもなかなか想像できない光景です。
ことしも除排雪作業はさぞ大変だろうと思いをはせていたら、「3㍍程度で甘いんじゃない」という声が聞こえてきそうなところがありました。
「隠れ豪雪日本一」をうたう西川町志津です。
町役場が毎日積雪を公表していますが、1月31日に412㌢と4㍍を超え、今月20日には514㌢と5㍍を突破。
24日には536㌢までに積み上がりました。
気象庁の観測地点でないため公式記録にはなりませんが、人が住んでいる地域での積雪日本一は間違いないでしょう。
雪が多過ぎてリフトを運航できず、スキー場開きが4月中旬というのもうなずけます。

 大寒波と豪雪のニュースが飛び交う中、思わず「?」が頭を駆け巡るような出来事が。
新庄市街地のど真ん中にクマが出没しているというのです。
1日から2日にかけて中心部を移動。
市民会館やJR新庄駅前などで目撃され、最後は麻酔銃で捕獲されました。
その翌日の3日には、酒田市郊外の集落で目撃され、民家の車庫に36時間ほど籠城し姿を消しました。
両市とも山裾から目撃された地点まではかなりの距離があり、途中に集落が数多く点在しています。
2頭ともそこを気付かれずに通り過ぎ、どうしてわざわざ遠くまでやってきたのでしょうか。
不思議です。
この時期、クマたちは雪に閉ざされた山中で深い眠りについているはず、まさか里で動き回っているなど驚き意外にありませんでした。
専門家が新聞やテレビで降雪期に出没した理由を解説していましたが、どうやら異常気象がクマたちから降雪期の眠りを奪っているようです。
地球温暖化による影響は本当に多方面に及んでいるのですね。

(2025年02月28日 辻蕎麦HP)

2025年 1月~2月号 辻蕎麦便り

1日中冷凍庫のような寒気の中に閉じ込められ、深々と降り続く雪。
明け方の暗闇の中、チェーンの音を響かせて除雪車が行き交う。
数年前までの大寒の山形といえば、こんな感じではなかったでしょうか。

それが一転、山形市街地に関していえば「雪国山形」の「雪国」を返上してもいいのではないかとさえ思えてきます。
昨年の1月は2020年以来の少なさでした。
最高に積もったのが、25日の20㌢で、月の半分は観測値なしだったのですから。
今年は昨年より若干多いものの、最高が11日の30㌢。
9日に26㌢降った雪に10日、11日に降った分が上積みされました。
その雪がしばらく残っていたので、記録上は雪が積もっている日が多いように見えますが、市街地ではあっという間に姿を消し、市民が目にするのは、屋根から落ちて積み上がった雪や、大規模駐車場で除雪した雪の山くらいでしょう。
最高気温がマイナスになる真冬日がないのも消雪の後押しをしているようです。

市街地周辺の田んぼでは切り株が見えてきています。
20日過ぎに郊外を車で走っていたら、田んぼの中で何やら妙な動きが。
一瞬、風で雪が舞い上がっているのかと思いましたが、目を凝らしたら白鳥の群れが餌を啄んでいたのです。
雪で一面が閉ざされていた数年前の1月では全く想像できなかった光景です。
10羽強と5、6羽の2グループで、黒っぽい羽根の幼鳥も混じっていました。
この様子なら北帰行もぐんと早まるのかもしれません。

年齢を重ねるごとに体力が衰え、除排雪作業をきついと感じるようになった身にとって、小雪の冬は有り難い限りです。
しかしこれが地球温暖化がもたらす異常気象によるものであれば、手放しで喜ぶわけにはいきません。
昨年秋以来の野菜の高騰が年を越しても続いています。
大きな要因は昨年夏から秋にかけての高温でした。
家庭の食卓を直撃しているこの問題は深刻です。

昨年の初夏の高温では山形県を代表するサクランボも大変な被害に見舞われました。
気温が高いので熟成のスピードが速まり、適期収穫が思うようにできなかったのです。
天童市で促成栽培されたサクランボ佐藤錦の初競りが今月5日に東京の大田市場と天童市青果物市場で行われました。
500㌘入り1箱にそれぞれ150万円の値がついたということです。
1箱に68粒入っており、1粒2万2千円ほどに。
こんな高級な1粒がいったい誰の口に、といったことはともかく、この値段は資材高騰や気象災害で厳しい状況にある生産地を応援するためにつけられたのだとか。
こうした気持ちがぜひ天に届き、穏やかな1年になってほしいと願っております。
(2025/01/31 辻蕎麦HP)