やまがた辻蕎麦 のすべての投稿

2025年 10月~11月号 辻蕎麦便り

寂しい秋ですね。
とは言っても「かさ、こそ」と落ちてくる色づいた木の葉を見て、センチメンタルになっているわけではありません。
山形の秋の風物詩である河原での芋煮会がほとんど姿を消したのです。
例年なら9月に日本一の芋煮会が開催された後、山形市の中心部を貫流する馬見ヶ崎川などの河川敷は芋煮会を楽しむ市民や観光客でにぎわいます。
それが今年は・・

原因はクマです。
市街地に出没し人や家畜を襲ったり、農作物を食い荒らしたりとさまざまな被害と恐怖をまき散らし全国的に大問題になっています。
人命も奪われるなどその深刻さは尋常でありません。
山形市のホームページに掲載されているクマの目撃情報は今月30日で265件に達しました。
ちなみに令和3年は48件、4年43件、5年82件、6年には74件ですから、今年がいかに異常かが分かります。
件数だけでなく出没した場所も昨年までは山林や山裾の農地がほとんどでしたが、9月以降連日のように住宅地や市街地の河川敷で目撃されるようになりました。

クマの影におびえながらの芋煮会やバーベキューでは秋の味覚を青空の下で満喫するどころではないでしょう。
クマが目撃された地域の小中学校は臨時休校や早退、保護者付き添いの登下校を強いられるし、子供たちが楽しみにしていた野外学習もほとんど取りやめになったとか。
数年前からこのブログでもエサになる木の実の凶作などクマにまつわる話を取り上げてきましたが、まさかこんな事態になるとは全く想像もできませんでした。
数年前、林道を走行中に車のすぐ前を親子クマ3頭が慌てて横切って藪の中に身を隠しました。
「怖い、逃げろや、逃げろ」的なあの後ろ姿からは、市街地で凶暴な行動に走るクマが同じ種類とはなぜか思えません。
人や車を恐れなくなったクマ。
突然変異じゃあるまいし、何が原因でこんなに変化してしまったのでしょうか。

下旬になってビッグニュースが飛び込んできました。
世界170カ国以上で旅行雑誌やデジタル媒体などを展開する米国・ナショナルジオグラフィックの「2026年に行くべき世界の旅行先25選」に山形県が選ばれたのです。
日本では一昨年の京都、昨年の金沢に次ぐもので、今回は国内で唯一です。
世界の中のわずか25カ所の1カ所ですから凄い。
他に選ばれたのは北京やブラジルのリオデジャネイロ、オーストラリアのエアーズロックなど。
蔵王や山寺、出羽三山などの美しい自然や温泉、それに料理の素晴らしさなどが高く評価されたとか。
世界中から訪れる人たちに山形のハイレベルのお蕎麦を楽しんでもらえる絶好の機会になりそうです。
「YAMAGATA SOBA」が海外で広く認知されると嬉しいですね。

(2025/10/31 辻蕎麦HP)

2025年 9月~10月号 辻蕎麦便り

今月に入ると、テレビや新聞で県内の秋の風景に関するニュースが急激に多くなりました。
見慣れた光景、初めて目にする光景と様々ですが、それ以上に夏とさほど変わらぬ暑さを保ったまま自然界はよくぞ移ろっていくものだ、と妙に感心しています。
もっとも日々の気温を子細にながめていると、最高気温は真夏日や夏日を超していても、最低気温が次第に低下してきています。
植物はこの辺に敏感に反応しているのかもしれません。

知らず知らずのうちに穏やかに変化していくのなら大歓迎ですが、いくら異常気象でもここまで極端なのはいかがなものか。
本当にもういい加減してくれと言いたくなるほどの乱高下が17日にありました。
アメダス山形によりますと、この日の最低気温は4時30分の21.0℃。
それが6時過ぎから急激に上昇し、7時には27.4℃、8時に29.2℃、そしてこの日の最高気温となった8時40分には31.0℃にまで達しました。
10時近くからは急激に下降し12時にはなんと23.9℃までダウン。
その後は緩やかに上昇しましたが、わずか半日にも満たない時間に真夏と秋を行ったり来たり。
あまり急激に体が熱っぽくなったので、体調を崩したのかと不安になり体温を計ったりして。
平熱でしたが体が乱高下に対応できません。

酷暑と少雨で徹底的に痛めつけられた野菜たちも、降雨や気温の低下で次第に生気を取り戻しました。
ただ高温障害の影響は大きく、なかなか本来の状態にはなりません。
6月に紹介した自然発芽のトマト栽培。
苗を一つの畝にまとめて植えたまではいいのですが、あまりの暑さに生育が止まり、花もほとんど咲きませんでした。
8月の降雨後にようやく花をつけ、実もちらほら見られるようになってきました。
今月に入り色づき始めたら、あっという間に害虫の一斉攻撃で穴開きトマトに。
主にオオタバコガの幼虫ですが、彼らも餌のトマトが極端に少ないので必死なのでしょう。
とはいえ、数少ない貴重なトマトを好き放題に食べさせておくわけにはいかないので、色づき始めたらその都度収穫し追熟しています。
追熟トマトは、見た目はごく普通のきれいな赤ですが、味は遠く及びません。
それでも一応実をつけてくれただけでも感謝です。
スイカも今月に入り、一気に肥大しましたが、真夏の味とは比べものになりません。
甘みが薄く水っぽいのです。
旬の時期を大きく外れるとこうなるのですね。

柿の実が色づき始め、そろそろ今年の菜園の作業も終盤に差し掛かています。
記録詰めの酷暑、少雨にほとんどの作物が多くの被害を被ったシーズンでした。
山形市の日本一の芋煮会向けに市総合スポーツセンター近くで栽培されている里芋は、3㌧の収量を見込んでいたものの実際は1.5㌧ほどだったということです。
懸命に対応策を講じる姿を時折目にしていたのですが。
黒潮の蛇行ルートが変化し今年はサンマが豊漁で、昨年までの高級魚から再び庶民の魚に変身。
夕餉の食卓で懐かしい味を楽しめるようになったのは嬉しいことです。
日本列島の上空もこの酷暑をもたらす気流がわずかでもいいから変化してくれませんかね。

(2025/10/01 辻蕎麦HP)