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2025年 9月~10月号 辻蕎麦便り

今月に入ると、テレビや新聞で県内の秋の風景に関するニュースが急激に多くなりました。
見慣れた光景、初めて目にする光景と様々ですが、それ以上に夏とさほど変わらぬ暑さを保ったまま自然界はよくぞ移ろっていくものだ、と妙に感心しています。
もっとも日々の気温を子細にながめていると、最高気温は真夏日や夏日を超していても、最低気温が次第に低下してきています。
植物はこの辺に敏感に反応しているのかもしれません。

知らず知らずのうちに穏やかに変化していくのなら大歓迎ですが、いくら異常気象でもここまで極端なのはいかがなものか。
本当にもういい加減してくれと言いたくなるほどの乱高下が17日にありました。
アメダス山形によりますと、この日の最低気温は4時30分の21.0℃。
それが6時過ぎから急激に上昇し、7時には27.4℃、8時に29.2℃、そしてこの日の最高気温となった8時40分には31.0℃にまで達しました。
10時近くからは急激に下降し12時にはなんと23.9℃までダウン。
その後は緩やかに上昇しましたが、わずか半日にも満たない時間に真夏と秋を行ったり来たり。
あまり急激に体が熱っぽくなったので、体調を崩したのかと不安になり体温を計ったりして。
平熱でしたが体が乱高下に対応できません。

酷暑と少雨で徹底的に痛めつけられた野菜たちも、降雨や気温の低下で次第に生気を取り戻しました。
ただ高温障害の影響は大きく、なかなか本来の状態にはなりません。
6月に紹介した自然発芽のトマト栽培。
苗を一つの畝にまとめて植えたまではいいのですが、あまりの暑さに生育が止まり、花もほとんど咲きませんでした。
8月の降雨後にようやく花をつけ、実もちらほら見られるようになってきました。
今月に入り色づき始めたら、あっという間に害虫の一斉攻撃で穴開きトマトに。
主にオオタバコガの幼虫ですが、彼らも餌のトマトが極端に少ないので必死なのでしょう。
とはいえ、数少ない貴重なトマトを好き放題に食べさせておくわけにはいかないので、色づき始めたらその都度収穫し追熟しています。
追熟トマトは、見た目はごく普通のきれいな赤ですが、味は遠く及びません。
それでも一応実をつけてくれただけでも感謝です。
スイカも今月に入り、一気に肥大しましたが、真夏の味とは比べものになりません。
甘みが薄く水っぽいのです。
旬の時期を大きく外れるとこうなるのですね。

柿の実が色づき始め、そろそろ今年の菜園の作業も終盤に差し掛かています。
記録詰めの酷暑、少雨にほとんどの作物が多くの被害を被ったシーズンでした。
山形市の日本一の芋煮会向けに市総合スポーツセンター近くで栽培されている里芋は、3㌧の収量を見込んでいたものの実際は1.5㌧ほどだったということです。
懸命に対応策を講じる姿を時折目にしていたのですが。
黒潮の蛇行ルートが変化し今年はサンマが豊漁で、昨年までの高級魚から再び庶民の魚に変身。
夕餉の食卓で懐かしい味を楽しめるようになったのは嬉しいことです。
日本列島の上空もこの酷暑をもたらす気流がわずかでもいいから変化してくれませんかね。

(2025/10/01 辻蕎麦HP)

2025年 8月~9月号 辻蕎麦便り

「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(古今和歌集)。
「処暑」を迎えたのですから、こんな忍び寄るような季節の変化を感じたいのですが、どうもそうはいかないようで。
わが菜園の野菜たちは、ようやくいつもの夏がやって来た、と感じたのか一斉に動き出したのです。

7月の平均気温は観測史上最高だったとか、山形周辺の降雨量は観測開始以来最少だったとか、7月といわず5月ころから異常な天候が続きました。
例年のごとく種を蒔き、苗を植えたにもかかわらず、ナスやオクラなどはひざ丈くらいでストップし、トマトやキュウリはなかなか花を咲かせません。
6月ころまでは、土づくりか、肥料の問題か、水不足かなどいろいろ考えてそれらしい対応もしましたが、7月に入りはっきり高温障害ということが分かりました。
雨が降らないので、地面に熱が溜まるだけ溜まり、相当に環境が悪化していたのですね。
枯らすことさえしなければいずれ何とかなるのではないか、と藁にも縋る思いで潅水だけは欠かさずやりました。

8月に入り地表温度が50℃を超す状態になると雑草も枯れ始めたのです。
さすがの雑草も枯れるんだ、など妙に感心してしまいました。
そのころになると県内各地の神社で雨乞い神事を行ったというニュースを目にするようになります。
それが奏功したんでしょうか、5日ころから雨が降り出しました。
文字通り干天の慈雨。
生物が一気に息を吹き返したようでした。
1週間あまり断続的に降ったこともあり地表の温度がぐんと下がったのでしょう。

地面が熱過ぎて伸びられずにいたカボチャやスイカ、メロンなどが一斉に動き始めたのです。
蔓が這い出し、受粉した雌花の果実も膨らみが目立つようになりました。
ナスやオクラもぐんと背が伸びました。
つい数日前まで息絶え絶えになっていたとは思えないほどです。
本来なら5月から7月にかけての景色が今月下旬になってようやく訪れたのです。
長期予報では北日本はしばらく平年より気温が高いということですから、スイカやメロンを味わえる日が来るかもしれません。
どんな味かはともかくちょっと楽しみでもあります。

四季が日本の気候の特徴だったはずですが、3季か5季になりそうな気配が濃厚です。
「夏が終わるとそのまま冬と感じられるようになる可能性も…」といった気象関係者の話がラジオから流れて来ても驚かなくなった自分に驚きました。
恐らく近い将来、猛暑夏または酷暑夏の両側に夏をはさんで冬の3季か、上手くするとかすかに春と秋が残る5季にかわるのではないでしょうか。
俳句の季語なんてどうなるんでしょうね。
ふとそんなことが浮かんできました。

(2025/08/31 辻蕎麦HP)