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2016年9月 辻蕎麦便り

長月。

リオ五輪のメダルラッシュで日本列島が連日興奮の渦に巻き込まれていたせいでもないでしょうが、ことしの夏は例年になく暑かったように思います。
おまけに台風が相次いで発生。11号が最初にやってきて、次に9号、そして10号と、発生時期と来襲時期がまったくばらばら。
日本列島の上空はどうなっているんだろうと思っていたら、10号が観測史上初となる東北への直接上陸を果たしただけなく、各地に甚大な被害をもたらしました。収穫間近な果樹農家などはうらめしげに空をながめながら防止策を施していましたが、山形県はさほどの被害もなく済みました。

台風はともかく、田んぼを吹き渡って来る風の柔らかさは例えようもありません。
これは田舎暮らしと都会暮らしをして初めて気付くのではないかと思います。
田舎暮らしだけだと、毎日のことで慣れっこになってしまい、「きょうは少し風があって気持ちがいいな」で終わってしまいます。
田んぼのない都会暮らしでは分かりようもありません。
真夏にビル街の暮らしから田舎に戻る際、列車の車窓から稔り始めた穂をかすかに揺らしながら流れる風が緑色に染まっているように見えるときがあります。
実際、田舎道で肌に触れるこの「緑の風」の心地良さは格別です。

9月に入り、「緑の風」に替わって「白い風」が吹くようになりました。
ご存知のように蕎麦の花です。
真っ青な空に下で果てしなく続くソバ畑を見ていますと、大きなうねりの真っただ中にいるような気がします。
山形県の蕎麦の作付面積はことしも増えたような感じです。
耕作放棄地だったところがソバ畑になっているところもあり、こうした光景を見ていると思わず嬉しくなります。

本格的な新蕎麦の季節も間もなくです。
毎年、この季節になると、辻蕎麦の本質はとか、他の蕎麦にはない特長はなにかなどが浮かんでまいります。
風味などというものは、言葉で表現するのはなかなか難しいものです。
ただ蕎麦本来の甘みとかコクなどは普通の人でも味わい感じ取れます。
辻蕎麦主人が40年近く研鑽を積み、より多くの人が本当に美味しいと感じ取れる蕎麦粉を開発しましたが、これが辻蕎麦最大の特長だといえます。
他の蕎麦と食べ比べてもらえれば、その違いは歴然です。
他では真似のできない蕎麦粉に辿り着き、それを最も美味しい状態に仕上げて、味の違いの分かるお客様に提供する、これが辻蕎麦です。
本当に美味しい蕎麦がより美味しくなる季節がやってまいります。
ぜひ期待してお待ちください。

>>やまがた辻蕎麦HP ブログより

2016年8月 辻蕎麦便り

葉月。

先月も紹介しましたが、熊騒動は治まるどころか、ますますひどくなるようです。
頭数が大幅に増え縄張り争いが激しくなっているところに、ちょっと山を下りれば美味しいものがふんだんにあるのですから熊にはこたえられないでしょう。

サクランボに始まりスイカ、桃、ブドウ、ラフランスと果樹王国山形は熊にとって天国かもしれません。
おまけにいずれも最高級品ぞろいときています。
しかし当然のことながら果樹農家は怒り心頭に発しております。
1年間丹精込めて育て上げ、ようやく出荷寸前までこぎつけたところで、熊公に食べられてしまうのですから。
しかも美味しいものだけを選んで食い荒らす。
スイカは中の赤いところを丁寧に食べ尽くし、皮だけを見事に残していくとか。
人間より食べ方はきれいだ、などといったことを耳にしたことがあります。

農家も指をくわええて被害に遭うのをみているわけにはいきません。
さまざまな防護策を施しています。
そういつまでも甘い汁、いや甘い味を満喫できるわけはありません。
そのうえ木の実が凶作とあっては、秋が深まるにつれ熊も生きるのに必死で狂暴化しかねません。
いまから心配です。

などと書きながら、先月末に今年初めてワラビ採りに行ってきました。
昨年まで熊の存在を気にしたことは全くありませんでしたが、さすがに連日の目撃報道に、ひょっとしたらという不安がよぎります。
今年は雨不足で、ワラビの出来具合はあまりよくありませんでした。
ワラビも伸びていなければ、雑草もさほど伸びていない。
しかし熊対策にはこれが大いに役立ちます。
熊との遭遇でもっとも危険なのが、ばったり顔を会わせること。
双方がパニックに陥って予測のつかない行動にでるそうです。
ある程度見通しの効くところにいればそうした危険は避けられます。
万々が一出会ったら、ワラビを包む新聞紙に火をつけて撃退しようとライターも持参しました。

採り始めは周囲をしっかり見回し慎重に歩を進めましたが、それも束の間。
藪の中にワラビらしきものがあればかき分けて入っていくし、眼の前に点在するワラビに導かれるように無意識のままに上へ上へ。
熊のことは時折り頭をかすめるが、「欲と道連れ」になればたちまち意識の外へ。
熊よりも30度を超す暑さに阻まれ1時間半ほどで下りざるをえませんでした。
過去に経験したことがないはらはらどきどきのワラビ採り。
量は少なかったが、お酒と蕎麦のお供として例年にない格別の味わいでした。

>>やまがた辻蕎麦HP ブログより