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2019年4月~5月 辻蕎麦便り

卯月。

みちのくにも遅い春がやってきました。
使い古した表現で失礼ですが、それだけ春が待ち遠しいということです。
春はやってきたのですが、暖かさと、青空はなかなか長続きしませんね。
「三寒四温」という言葉がありますが、そろそろ「四温」だけにしてほしいものです。

ことしの山形や天童周辺の“桜花爛漫”の時期は、嬉しいくらいに青空が広がりました。
毎年全国ニュースになる「日本一の芋煮会」会場の馬見ヶ崎川河畔の道路の両側に、約2㌔にわたって200本を超えるソメイヨシノが植えられていますが、年々、桜のトンネルがしっかりしてきています。
このトンネルは、単に桜の枝が両側からかぶさっているだけでなく、花房と花房の間から純白に光り輝く月山や朝日連峰の山並みが見えるのです。
青空、純白の頂群、それに淡い紅色が織りなす光景を想像してみて下さい。
道路は上下線ともどこまで続くのと言いたくなるほどの車の列です。
これだけの渋滞、普段なら冗談じゃないよと腹立たしくなるところですが、この時ばかりは嬉しい限り。
用事のある人には申し訳ないが、車中からのお花見はゆっくりに限ります。
恐らく9割くらいの車はゆっくり賛成派でしょう。

山形市内に全国のお城で5番目の広さを誇った跡地の霞城公園があります。
ここも城内からお堀端にかけて桜の大木で埋め尽くされました。
そんなオーバーなと思われるかもしれませんが、満開の時期はそう見えるのです。
以前はそれほどでもなかったのですが、ここ数年、花見客が急増。
長い年月、お城の花を見ていますが、東京の上野公園とまではいかなくても、桜の下は人、人、人。
こんなに大勢どこから来たのかと思わず問いたくなるほどです。
近年は海外からの客も増えているといわれていますが、そのうち、いろいろな国の言葉が飛び交うお花見になるんですかね。
それはそれで楽しいような気がしますが。

もうひとつの山形の春の楽しみは山菜。
恐らく全国有数の、いや全国一の山菜王国ではないでしょうか。
収穫量ではなく、食べる種類の数ですが。
早々に友人が山里の南斜面で採ってきたとワラビを届けてくれました。
さらにささやかなわが菜園に植えてあるアケビの新芽「木の芽」、その蔓の先端の柔らかい部分である「ヨリデ」、村山地方で「ナンマエ」というミツバウツギなどを摘み、軽く湯がいて食卓へ。
クルミをちょっぴりのせ、醤油をかければ冷酒にとってかけがえのない友です。
それに山菜そばや山菜てんぷらが美味しくなる時期。
山形は春の香りと味を存分に楽しめるところでもあるのです。

2019年04月29日

 

 

2019年3月~4月 辻蕎麦便り

陽光が一段と強まり、低く垂れこめた空模様にうつうつとしていた気持ちも実に晴れやかになってきました。
2月20日ころには早々と雪が消えたので、いつもの年より早い春の訪れを期待したのですが、そうはいきませんでした。
ウメや水仙など早春の花々は幾分早いかなといった程度で、それほど急ぎ足だったわけではなさそうです。
やはりこの時季は「三寒四温」で移ろい、「二寒五温」にはならないのですね。

久々に菜園をのぞいてびっくりしました。
見事なくらいに土が掘り返されているのです。
犯人はモグラとネズミ。
冬の間中雪の下で大運動会を繰り広げていたのではないかと疑いたくなるほどの荒れようです。
モグラの通った後は、土が盛り上がり一目瞭然。
モグラには縄張りがあり、結構広い面積に1匹しかいないと何かで読んだ記憶がありますが、本当にこれが1匹でやった仕業かよと首をひねりたくなるほどです。
ネズミは菜園の至る所に穴をあけ、地中を縦横無尽に走り回っていました。
エサを求めての動きですが、例年にないひどさです。
それだけエサが不足し、必死だったのですかね。
 
大運動会の被害者は雪の下で冬を越したタマネギやイチゴなどの苗。
根を直接かじられないまでも、地中に掘られた穴の中で根が宙ぶらりんになり枯れてしまうのです。
茎がしんなりしているものを手にすると、あっさり抜けてしまいます。
雪が降るまでしっかり育っていただけに残念でなりません。
残った苗は、これからしっかり手を掛けていかないと。

自然の大変さを味わわされましたが、自然の強さにも感動しました。
秋にプランターに植えていたレタスミックスとホウレンソウ。
10㌢ほどまでに成長し、時折りサラダ用に摘んでいました。
降雪期を迎え不織布で覆って寒さ対策をしたのですが、気温がマイナスの日々が続くとさすがに耐えきれなかったようです。
凍って次第に枯れ始め、いずれ全滅するのではないかと思っていました。
ところがそうはならず、今月に入り気温が高くなると、残った3分の2ほどが成長し出したのです。
あの冬の厳しさを生き抜いて、再び葉を広げ始めた生命力のたくましさに感動。
愛おしさが募り、しばしの間、摘み取って食卓に並べることができませんでした。
われながら変な感じではありましたが。
懸命に生き抜こうとしている姿は動物も植物も関係なく心を動かすものですね。
簡単にあきらめ、見放してはいけないということを改めて思い知らされました。

2019年03月29日