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2023年 1月~2月号 辻蕎麦便り

大雪に見舞われ心身ともに疲労困憊状態だった昨年と違い、ことしの山形市周辺の年明けは比較的少雪で推移しています。
元旦の天気予報は余り芳しいものではありませんでしたが、8時過ぎに雲が切れて青空が広がり、太陽がしっかり顔を見せてくれました。
たまたま外にいてこの様子を目にすることができました。
初日の出ではありませんが、雲を押しのけて射し込んでくる強烈な光はなにやら神々しく感じられ、思わず合掌してしまいました。
長引く新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う惨劇と世界的な経済混乱など地球的に人々を苦しめている物事が一日も早く、いや一瞬でも早く治まり解決されるよう願わずにいられませんでした。

降雪が少ない上に、気温も比較的高めだったこともあり、10日過ぎには道路どころか庭からも白い世界が姿を消しました。
ひょっとしたら2020年1、2月のように雪のない冬になる。
除排雪に汗をかくことも無くなるのではと期待半分、植物に与える影響が大き過ぎるかもなど不安半分で空を見つめていました。
わがささやかな菜園では収穫し残した野菜たちが白い衣を脱いで姿を現わすほどに。
雪下の野菜は自らの凍結を防ぐために糖分を創り出すので、より甘みを増します。
これを味わわない手はないとさっそく白菜などを取り入れて鍋物に。
思いもかけないプレゼントで、味がしっかりしているうえに口の中に入れるととろけるような柔らかさ。
あまりの美味しさに酒量もアップしてしまいました。

ところがほどなく「24日頃から10年に1度の最強寒波に警戒を」との天気予報が繰り返されます。
昨年の再来かよ、とうんざりしていたら、「西日本各地で大雪」のニュースが流れた25日朝になっても、ふわっとかぶさっている程度。
鹿児島市の友人に「けさ9時に山形市の積雪が鹿児島市と同じ2㌢になりました。いつもならほとんど雪のない仙台が9㌢。山形市が東北の県庁所在地で最も少ない。初めてじゃないでしょうか。これも異常気象?」とメールを送ったら、桜島の雪景色を添付し「結構降りました。雪に慣れていない南国はいろいろと大変です」との返信がありました。
その後も雪はさほどではありませんが、気温は下がりっぱなし。
連日の真冬日続きで家ごと冷凍庫に入っているよう。
高騰している電気料金がちらつくものの、暖房を高めに設定しないと耐えられません。
もういい加減にしてほしい。
寒波が去ってエネルギー価格を元に戻して、雪国の人たちの共通した願いではないでしょうか。

今年もより美味しいお蕎麦を目指して精進してまいります。
どうかよろしくお願い致します。
(2023/01/31 辻蕎麦)

2022年 9月~10月号 辻蕎麦便り

「えっ、なにこれ」「美味しいから食べてみて」。
昨年の晩秋に小さな一粒の果実に出会いました。
黄色っぽく透明感のある真ん丸い実で、直径2㌢前後かなという大きさです。
こんな小さな果実は見たことがありませんでした。
正体は?とにかく食べたら教えるからと言われ、恐る恐る口の中へ。
かんだ瞬間、超ミニサイズから出たとは思えないほどの爽やかな甘さが口全体に広がります。
何かに似ている味だが、これと言って思い浮かばない。
多分、完熟した複数の果物の良いところだけをとったような、といえば褒めすぎかもしれませんが、そんな感じでした。

食べ終えて答えを教えてもらったら、「ホオズキ」だって。
一瞬、「嘘でしょう」。
ホオズキって毒素が含まれているという記憶が頭の片隅にかすかに残っていたからです。
さては好奇心の強さと食い意地を利用されて毒殺を企てられたかなどとあらぬ妄想にかられながら、正体を訊ねたらホオズキはホオズキでもショクヨウホオズキという別の種類なのだとか。
来年、種を蒔いて育ててみたらと数粒渡されました。

夏物野菜の種蒔きや植え付けなどが一段落したところで、ふと思い出しました。
どうすれば良いのか分からず、実そのものをポットに植えたり、実をつぶして種を出して蒔いたりしました。
しかし畑に植えた野菜の世話や草取りなどに追われて放置状態に。
気付いたらどのポットからも芽が出て、葉をつけていました。
植物の生命力の強さに改めて感動させられると同時に、手抜き農法になっている自分に反省しながら、さっそく畑に定植しました。

今月に入りホオズキ特有のかわいらしい紙風船のような袋が姿を現しました。
最初は緑色で徐々にベージュ色に変化し、ある日突然ふわりと地面に落ちてきます。
これが完熟した証とか。
袋を破ると中には、毒殺されかけたと勘違いした小さな実が。
口に含んだら、当たり前ながら去年と同じように爽やかな甘さが広がりました。
ネットで検索したら、欧米では昔から食べられていたようですが、日本ではまだそれほど普及していないのだとか。
料亭や高級レストランで提供されている、といった説明も。
種類はいろいろあるようですが、わが菜園にあるものが何かはまだ調べていません。
何歳になっても知らないことが次々と出て来るもんですね。

山形市周辺のソバ畑は真っ白いうねりの季節を終え、収穫時期に向かっています。
ことしも美味しいお蕎麦に仕上がるのは間違いなさそうです。
新蕎麦を堪能できる日を心待ちにしております。
(2022/09/29)