2026年 2月~3月号 辻蕎麦便り

そういえばこの冬は白鳥を観ていなかったな。
窓越しに庭先の土の中から次々と顔を出すチューリップの芽を眺めていると、何の鳥か分かりませんが、外で突然鳴き声が。
触発されるようにふとそんな思いが浮かんできました。
優雅な立ち居振る舞いに魅かれ、白い群れとの出会いを毎年楽しみにしていますが、今年はなかなかその機会に恵まれませんでした。

今冬の山形市周辺は本当に雪が少なく、市街地はもとより畑や田んぼからも早々に雪景色が消滅してしまいました。
いつもなら雪解けの水をたっぷり含み、やや黒っぽくみえる土も乾いてきています。
こんな状態では郊外に出掛けたところで、彼らと出会うのは難しいかな。
しかし楽しみにしている冬の風物詩、1シーズンに1回くらいはぜひお目にかかりたい。
3連休中に車で北上し、白鳥探しの旅と洒落込みました。

山形や天童市近郊の果樹園では早くも剪定作業が始まっています。
例年なら雪で覆われ静まり返っている園地の中で、懸命に作業をする果樹農家の人たちの姿をあちこちで見かけました。
どこまで行けば良いのか、こんな光景が広がるようではさすがに無理かなという思いが時折り頭をかすめます。
東根、村山の市境に差し掛かった時でした。
遠くの田んぼに残雪と見間違いそうな白い固まりが蠢いています。
近づくにつれ、白鳥の群れがしっかり形づくられてきました。

5、60羽くらいのグループが幾つも広大な田んぼのあちこちで、ほとんど頭を上げることなく懸命に落ち穂を啄んでいます。
そんな中で、突然、羽根を広げて求愛のような行動を繰り広げたり、家族なのか4、5羽で急に飛び立ち散歩に出かけるものも。
長旅に備えエネルギーを目いっぱい蓄え、同時に旅立ち前の穏やかなひと時を楽しんでいるのかもしれません。
北帰行のためにこの群れが一斉に飛び立つ姿を想像すると、一気に春の気配が濃くなったような気がしました。

今年の1、2月は実に不可思議な感覚に陥る冬でした。
13年ぶりに災害救助法が適用された新庄・最上をはじめ庄内、置賜など県内のほとんどが例年にない豪雪に見舞われました。
絶え間なく降り積もる雪に多くの人たちが大変な苦労を強いられたようです。
そんな中で、山形市や天童市周辺だけが極めて雪の少ない冬となりました。
疲労の色を浮かべながらうず高く積もった雪に挑む他地域の人々に申し訳なさを感じるほどです。
積雪の最高が15㌢で、雪がなく計測できない日も結構ありました。
雪雲の動きをテレビの天気予報で見ていると、山形市周辺の上空には流れ込まず、丸く穴が空いたようになっているのです。
どうしてこんな状態になるのでしょうか。
地形が影響しているとか、例年に比べて雪雲が低く途中の山に遮られたのではないかなどいろいろな説明を耳にしましたが、いずれにしても不思議いっぱいです。
果して今年だけなのか来シーズン以降も続くのか興味津々です。

先月末、海上で人工的に雨や雪を降らせ陸地での災害を減らす実験が始まったニュースが流れていました。
千葉大学や富山大学の研究チームが富山県沖合で行っているということです。
あまりに壮大でピンときませんが、もしこんなことが可能になったら、近年激しさを増している豪雨、豪雪災害を軽減する道が開けてきます。自然災害大国日本としては期待が大きく膨らみそうです。

(2026/02/28  辻蕎麦HP)