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2022年 11月~12月号 辻蕎麦便り

今月に入って青空が広がる日が多く、ちょっぴり浮き立つ気持ちで過ごすことが出来ました。
紅葉にしても枯れ葉にしても青空をバックに太陽の光が透過し、クリアなX線写真のように葉脈を浮かび上がらせ、自然の造形美をたっぷり堪能させてくれる。
この季節ならではです。
異常気象に振り回されたこの1年ですが、季節感が比較的素直な月だったのではないでしょうか。

月末になりいよいよ天気予報に雪だるまのマークが登場するようになりました。
雪は自然の大いなるダム湖。
人間を含め生物が生きていくのに極めて重要だということは分かりながらも、雪国で暮らしていると、ついつい余計なものに思えてなりません。
天気予報の雪だるまに加えて、この時期は日照時間が極めて短い。
朝の6時ころでも薄暗く、張り切って起きようかなどという気分には到底なれません。
まして雨や雪ということになれば、少々ハイテンションの人でも憂鬱になるのではないでしょうか。

西高東低の完全な冬型気圧配置になる前に済ませようと、中旬頃から庭の樹木の雪囲いを始めました。
職人さんと違って手際よくてきぱきと進められるわけもなく、他の用事を抱えながらなので亀さん並みのスピードでやるしかありません。
なんせ長さが3㍍前後で、大人が両手でやや小さめの輪をつくったくらいの太さの稲杭、それと似たような長さで幅15㌢ほどの板を樹形に沿って立て掛け、藁縄で結束していきます。
1本の樹木で10数本必要なものが多く、結構な重さがあるし、縄を結ぶのも容易でありません。
雪の重さに耐えるような縄は結構な太さと硬さがあり、日に日に指の関節や筋に痛みが増してきます。

そんな作業の最中、縄を結び終え何気なく隣に目を移したら白く小さい桜の花びらが飛び込んできました。
えっ、雪囲いの時期に桜の花。
シキザクラ。
春と晩秋の年に2回開花する珍しい桜です。
花をつけたのをうっかり見逃していたので、一瞬ドッキリしました。
そうか今年も咲いていたんだ。
春に比べてか細げに映る花びらは晩秋の冷気にさらされより憐れを覚えます。
12月早々には降雪が予想されています。
降雪量はどうか平年並みか若干少なめでお願いします、と作業をすべて終えたあと天に向かって祈りました。

相変わらず新型コロナがはびこっています。
秋風が吹き始めたころから山形県では急激に感染者が増え、一時10万人当たりの感染者数が沖縄県に次いで全国2位になったというニュースが流れました。
その後もなかなか減少せず、小中学校などの学級閉鎖が相次いでいるといった話も聞こえてきます。
「もうそろそろではないか」「来春こそは」と幾度繰り返してきたことやら。
もう本当に勘弁してほしいものです。

2022年 10月~11月号 辻蕎麦便り

神無月。
これも異常気象のなせるわざ?「けさ、山形市で初霜と初氷を観測しました」というラジオのニュースにわが耳を疑いました。
「ヤマガタで。嘘だろう。どこかもっと北の方の話じゃない」。
25日午前のことです。
霜にしても、氷にしても山形市では11月に入ってからと思い込んでいましたから。
まさか10月に、と思って昼にテレビのニュースを見ていたら、間違いなく山形市でした。
初霜は平年より10日、昨年より20日、初氷は平年より13日、昨年より27日それぞれ早いということです。

いくら何でも早過ぎない。
菜園を見渡したら強い霜にやられたらしく葉が黒ずんだり、萎れている野菜も。
夏野菜でも10月いっぱいはなんとか収穫できるものもあり、そのままにしておいたのが被害を受けたようです。
あとは撤去するしかありません。

わが菜園でも季節を無視したような気温の乱高下にことしは随分振り回されました。
その典型が、今が収穫期の柿です。
わが家の柿の木は樹齢約80年の平核無(ひらたねなし)ですが、毎年渋抜き柿や干し柿を作り県内外の友人にお裾分けするのに十分なくらいは実を付けてくれます。

柿は隔年結果といって、やたら実を付けた翌年は極端に着果数が少なくなるという性質を持っています。
来年の花芽が前の年の7月から8月に形成されますが、その時に生っている柿の実が多過ぎると、花芽に養分が行き渡らず翌年は不作なるということです。
これを防ぐため、この時期に着果数を減らす摘果作業を行います。

7月末に摘果作業を行いましたが、奇形の柿の実が次から次に見つかりました。
こんなことは初めての経験です。
葉の色と果実が同化していて分かりにくかったのですが、あまりの多さに柿の木そのものが老木故に何らかの病気に侵されてしまったのではないか、と愕然としました。
いろいろ調べて分かったのですが、病気ではなく環境の激変によるストレスが主な原因のようです。
果実の成長過程で極端な気温の乱高下にさらされると奇形が生じやすいとか。
気象庁のデータベースで確認すると、確かに5月から6月にかけて、30度前後の最高気温が数日続いたかと思えば20度以下になる日々も。
人間だって激変への対応が大変なのに、自ら動けない植物がおかしくなっても不思議ではありません。

奇形の果実は目につく限り切り落としたつもりでしたが、色づくにつれかなり残っているのが分かりました。
天狗のお面や小便小僧、お尻などといったユーモラスなものから形容し難いものまで形はさまざま。
いずれにしても話のネタに、と渋抜きしたり、皮を剥いて干し柿用に吊るしたりしています。

気温の乱高下の影響は当然のことながらわが家だけではありません。
ネットを見ていたらある柿栽培農家では半分以上の実に奇形が生じているということでした。
趣味でやっているから面白半分に干し柿などを作っていますが、栽培農家はそうはいきません。
奇形の柿は出荷できず、被害甚大です。
本当にいつまでこんなことが続くんでしょうね。
季節に沿った移ろいの日々が恋しくてたまりません。