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2022年 9月~10月号 辻蕎麦便り

「えっ、なにこれ」「美味しいから食べてみて」。
昨年の晩秋に小さな一粒の果実に出会いました。
黄色っぽく透明感のある真ん丸い実で、直径2㌢前後かなという大きさです。
こんな小さな果実は見たことがありませんでした。
正体は?とにかく食べたら教えるからと言われ、恐る恐る口の中へ。
かんだ瞬間、超ミニサイズから出たとは思えないほどの爽やかな甘さが口全体に広がります。
何かに似ている味だが、これと言って思い浮かばない。
多分、完熟した複数の果物の良いところだけをとったような、といえば褒めすぎかもしれませんが、そんな感じでした。

食べ終えて答えを教えてもらったら、「ホオズキ」だって。
一瞬、「嘘でしょう」。
ホオズキって毒素が含まれているという記憶が頭の片隅にかすかに残っていたからです。
さては好奇心の強さと食い意地を利用されて毒殺を企てられたかなどとあらぬ妄想にかられながら、正体を訊ねたらホオズキはホオズキでもショクヨウホオズキという別の種類なのだとか。
来年、種を蒔いて育ててみたらと数粒渡されました。

夏物野菜の種蒔きや植え付けなどが一段落したところで、ふと思い出しました。
どうすれば良いのか分からず、実そのものをポットに植えたり、実をつぶして種を出して蒔いたりしました。
しかし畑に植えた野菜の世話や草取りなどに追われて放置状態に。
気付いたらどのポットからも芽が出て、葉をつけていました。
植物の生命力の強さに改めて感動させられると同時に、手抜き農法になっている自分に反省しながら、さっそく畑に定植しました。

今月に入りホオズキ特有のかわいらしい紙風船のような袋が姿を現しました。
最初は緑色で徐々にベージュ色に変化し、ある日突然ふわりと地面に落ちてきます。
これが完熟した証とか。
袋を破ると中には、毒殺されかけたと勘違いした小さな実が。
口に含んだら、当たり前ながら去年と同じように爽やかな甘さが広がりました。
ネットで検索したら、欧米では昔から食べられていたようですが、日本ではまだそれほど普及していないのだとか。
料亭や高級レストランで提供されている、といった説明も。
種類はいろいろあるようですが、わが菜園にあるものが何かはまだ調べていません。
何歳になっても知らないことが次々と出て来るもんですね。

山形市周辺のソバ畑は真っ白いうねりの季節を終え、収穫時期に向かっています。
ことしも美味しいお蕎麦に仕上がるのは間違いなさそうです。
新蕎麦を堪能できる日を心待ちにしております。
(2022/09/29)

2022年 8月~9月号 辻蕎麦便り

葉月。

今月上旬の豪雨災害で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
3日から4日にかけ山形、新潟県境に発生した線状降水帯により県南部の置賜地方に記録的大雨が降り、飯豊町高峰では4日の24時間雨量が306.5㍉に達し、小国町、米沢市、長井市などでも観測史上最大になりました。
各地で河川の氾濫が発生。
これによりJR米坂線の鉄橋崩落や国道113号線が各地で通行止めになるなど、山形と新潟を結ぶ大動脈が寸断され、県境に位置する小国町が一時孤立する事態に追い込まれました。

降った雨のほとんどが山形県の母なる川最上川に流れ込むだけに、流域の一部では床上浸水の被害が発生。
テレビの全国ニュースでその模様が再三放映されました。
「まさかとは思うが」と心配した他県に住む友人、知人から相次いで電話が入りました。
山形市周辺の降りはそれほど強くなく、それまで畑がカラカラに乾いていただけに被災地の方々には申し訳ないが干天の慈雨という感じだったと伝えました。
県の発表によりますと被害総額は道路や河川の損壊、農林水産業など合わせて223億円に上るということです。
被害に遭った建物は1610棟、農地は3743㌶に及んでおり、懸命な復旧活動が行われております。

新型コロナの感染が急拡大しましたが、特段の規制策を打ち出されることもなかったので、各地で3年ぶりに夏祭りが開催されました。
東北を代表する祭りのひとつ「山形花笠まつり」も5日から7日まで山形市内のメーンストリートを会場に盛大に行われました。
踊りの参加集団を少なくしたり、「ヤッショ、マカショ」の掛け声をやめたりと感染防止にいろいろな工夫をしたようですが、それでも踊り手や沿道の観衆には久しぶりに戻った“いつもの祭り”に笑顔があふれていました。

何かと異変続きの今年の夏。
8月は夏の盛りだけに、青空にぎらつく太陽、そして遠くに湧き立つ入道雲という光景が自然の姿。
その手前にはこれでもかと咲き誇るヒマワリたちやこうべを垂れ始めた稲穂がどこまでも広がる水田の景色が浮かんできます。
ところが今年はこうした景色は山形市周辺からどこかに引っ越して行ったんでしょうか。
数日続けてどころか、1日通しでさえ晴れ渡った青空やぎらつく太陽にお目にかかっていないのです。

気象庁のデータベースをみると、昼(6時-18時)、夜(18時-翌6時)の両方とも「晴れ」は1日もありませんでした。
「曇後時々雨」「曇時々雨」という文字がずらりと並んでいます。
気になったので日照時間を調べてみました。
山形市の8月の平年は171.8時間で1日当たり5.55時間です。
今月27日までの日照時間を合計したら107.5時間で、1日当たり3.98時間。
ここまで少なかったとは。
農作物への影響はないんでしょうかね。

真っ青な夏空にはほとんどお目にかかれませんでしたが、爽やかな秋空はなんとか続いてほしいものです。
それにいうまでもなく新型コロナもいい加減終息して。
これからの山形は日本一の芋煮会をはじめとする芋煮シーズン。
マスクなしで、仲間たちとかつてのように楽しくお酒を酌み交わしながらおいしい故郷の味を楽しめる日が来るよう期待しています。
(2022/8/31)