やまがた辻蕎麦 のすべての投稿

2022年 4月~5月号 辻蕎麦便り

赤、白、黄色、紫など色鮮やかに咲き誇る庭のチューリップたちが一夜にして白銀と混じり合い、強い朝日を受けて晴れ渡った青空に浮かぶさまはまさに一幅の絵画です。
立夏を目前にまさか冬に逆戻りするとは。
30日未明に降り出した雪は夜明けとともに止みましたが、種々の花々が妍を競う季節にそぐわない世界を出現させました。
前日の昼過ぎころから急激に気温が下がり、やたら寒かったのですが、この光景をみていると納得させられます。
天気予報では黒い雲に小さい雪だるまが添えられていました。
降雪は山間部のことと勝手に思い込んでいたので、まさか平地でもこうなるとは。

11日に待ちに待った桜の開花宣言がありました。
今冬は例年にない豪雪に見舞われ、1日も早い華やぎの世界の訪れを願っていただけに開花宣言は嬉しさとともにどこかほっとしたものがありました。
このころから気温が乱高下し、最高気温が夏日の26℃になる日もあれば、いきなり10℃と急降下。
開花を宣言された桜もさぞびっくりしたことでしょう。
あっという間に満開になり「重くないですか」と思わず声を掛けたくなるほど多くの花をつけたのはいいが、あまりの寒さにもう一度蕾に戻ったほうがいいのではと身を、いや樹を震わしているのではないかと可哀そうになるほどでした。

そんな中、16、17日に天童市の舞鶴山公園では恒例の「人間将棋」が行われました。
数年前にも紹介しましたが、これを作り上げたのは辻蕎麦代表・輝彦の父・故勇蔵です。
天童は日本一の将棋の駒の生産地。花見時の観光資源にと当時観光協会長をしていた勇蔵が考え、1956年から始めました。
プロ棋士同士が対局し、一手指す度に広場に設けた巨大将棋盤の上で鎧甲冑を身にまとった若者たちが大きな駒を縦横に持ち運びます。

ことしは会場の広場を取り囲む桜並木が満開になり、しかも見事に晴れ渡る絶好の環境の中で行われました。
コンデションも良かったのですが、70年近い歴史の中でかつてないほどの盛り上がりをみせたのです。
実は17日の対局者の1人が将棋界のスーパースター藤井聡太5冠だったのです。
実行委員会では新型コロナ対策として、観覧者の定員を660人に限定し事前募集しましたが、なんと全国から11,714人もの応募がありました。
18倍弱の高い競争率で、そのフィーバーぶりに関係者は大興奮。
天童温泉の各旅館やホテルはほぼ満杯状態だったとか。
観覧者は将棋ファンだけでなく、「藤井ファン」が結構多かったようで、これをきっかけに天童、山形の魅力を知ってもらえればと期待を強めていました。
イベントの創始者もさぞ喜んでいることでしょう。

わがささやかな菜園もようやく動き出しました。
白菜の茎立ちやニラ、アスパラなど旬の味を楽しめるようになってきています。
いろいろな野菜の播種や苗の定植作業などが引きも切らず待っています。
遅れないようにしなければ。
(2022/04/30)

2021年8月~9月 辻蕎麦便り

先月、白いベニバナを見て驚いた話を紹介しましたが、この夏はもうひとつ「お初にお目にかかります」がありました。

「コリンキー」。
これなに、と思われるかもしれませんが、野菜の名前なのです。
5月下旬にわがささやかな菜園に植える野菜の苗を求めて、ホームセンターなどを回っていた時に、ある店で苗の入ったポットが1個だけ売れ残ったようにぽつんと置かれていました。
時期的に苗販売のシーズンは最終盤で、大方のお店はコーナーを縮小するか撤収し始めています。
名前を見たら「コリンキー」。
連れ合いが「一度植えてみようよ」というので、何が何だか分からずにとりあえず「うん」。
葉がカボチャと似ているので、調べもせずにカボチャの脇に同じようなやり方で定植しました。

カボチャは暑くなり、花が咲くまで放置するのが常だったので、しばらくは他の野菜の定植作業や草取りなどに追われて目を向けることもありませんでした。
7月上旬、何気なくカボチャの様子をみたら、その一角にレモン色の小玉スイカ大のものが。
正直、「コリンキー」を植えたことすら忘れていたので、ちょっとびっくり。
そういえば、一本だけ何やらよく分からないままに植えたのがあった。
確か「コリンキー」。
慌てネットで調べたら、唯一生で食べられるカボチャの仲間。
しかも20年ほど前に大手種苗グループの山形県の会社が海外品種と国内品種を掛け合わせて作ったようで、農林水産省に品種登録されています。

野菜でも果物でも普通は熟してから収穫しますが、「コリンキー」は早採りがお薦め。
最初はレモン色をしていますが、熟すと赤みが差し始め、次第に濃いオレンジ色に変わっていきます。
サラダや浅漬け、スムージーなどで味わっていますが、こりこりした歯触りは実に心地よい。
匂いはなく、味も爽やかで癖がなくちびっ子たちにも好評です。

親蔓から子蔓、そして孫蔓へと旺盛に伸び、そこそこのスペースが埋め尽くされ足の踏み場もないほど。
特段の世話もしないのに花が次々と咲いては実を結び、大きくなっていく。
これがたった1本の苗から始まったとは。
お盆前後に気温が急降下した時は成長が鈍ったようですが、その後は再び実を付けて成長。
知人、友人にお裾分けする日々が続きました。
山形に生まれて20年ほどの野菜ですが、知らなかったのは自分だけでなく、知人、友人も「そういえば名前を聞いたことがある」程度で、ほとんどは初めてお目にかかったようです。
こんなこともあるんですね。

ソバ畑では白いうねりが果てしなく広がるようになりました。
香り豊かな新そばの季節が間近です。
楽しみにお待ちください。
(2021/08/29)