やまがた辻蕎麦 のすべての投稿

2022年 10月~11月号 辻蕎麦便り

神無月。
これも異常気象のなせるわざ?「けさ、山形市で初霜と初氷を観測しました」というラジオのニュースにわが耳を疑いました。
「ヤマガタで。嘘だろう。どこかもっと北の方の話じゃない」。
25日午前のことです。
霜にしても、氷にしても山形市では11月に入ってからと思い込んでいましたから。
まさか10月に、と思って昼にテレビのニュースを見ていたら、間違いなく山形市でした。
初霜は平年より10日、昨年より20日、初氷は平年より13日、昨年より27日それぞれ早いということです。

いくら何でも早過ぎない。
菜園を見渡したら強い霜にやられたらしく葉が黒ずんだり、萎れている野菜も。
夏野菜でも10月いっぱいはなんとか収穫できるものもあり、そのままにしておいたのが被害を受けたようです。
あとは撤去するしかありません。

わが菜園でも季節を無視したような気温の乱高下にことしは随分振り回されました。
その典型が、今が収穫期の柿です。
わが家の柿の木は樹齢約80年の平核無(ひらたねなし)ですが、毎年渋抜き柿や干し柿を作り県内外の友人にお裾分けするのに十分なくらいは実を付けてくれます。

柿は隔年結果といって、やたら実を付けた翌年は極端に着果数が少なくなるという性質を持っています。
来年の花芽が前の年の7月から8月に形成されますが、その時に生っている柿の実が多過ぎると、花芽に養分が行き渡らず翌年は不作なるということです。
これを防ぐため、この時期に着果数を減らす摘果作業を行います。

7月末に摘果作業を行いましたが、奇形の柿の実が次から次に見つかりました。
こんなことは初めての経験です。
葉の色と果実が同化していて分かりにくかったのですが、あまりの多さに柿の木そのものが老木故に何らかの病気に侵されてしまったのではないか、と愕然としました。
いろいろ調べて分かったのですが、病気ではなく環境の激変によるストレスが主な原因のようです。
果実の成長過程で極端な気温の乱高下にさらされると奇形が生じやすいとか。
気象庁のデータベースで確認すると、確かに5月から6月にかけて、30度前後の最高気温が数日続いたかと思えば20度以下になる日々も。
人間だって激変への対応が大変なのに、自ら動けない植物がおかしくなっても不思議ではありません。

奇形の果実は目につく限り切り落としたつもりでしたが、色づくにつれかなり残っているのが分かりました。
天狗のお面や小便小僧、お尻などといったユーモラスなものから形容し難いものまで形はさまざま。
いずれにしても話のネタに、と渋抜きしたり、皮を剥いて干し柿用に吊るしたりしています。

気温の乱高下の影響は当然のことながらわが家だけではありません。
ネットを見ていたらある柿栽培農家では半分以上の実に奇形が生じているということでした。
趣味でやっているから面白半分に干し柿などを作っていますが、栽培農家はそうはいきません。
奇形の柿は出荷できず、被害甚大です。
本当にいつまでこんなことが続くんでしょうね。
季節に沿った移ろいの日々が恋しくてたまりません。

2022年 9月~10月号 辻蕎麦便り

「えっ、なにこれ」「美味しいから食べてみて」。
昨年の晩秋に小さな一粒の果実に出会いました。
黄色っぽく透明感のある真ん丸い実で、直径2㌢前後かなという大きさです。
こんな小さな果実は見たことがありませんでした。
正体は?とにかく食べたら教えるからと言われ、恐る恐る口の中へ。
かんだ瞬間、超ミニサイズから出たとは思えないほどの爽やかな甘さが口全体に広がります。
何かに似ている味だが、これと言って思い浮かばない。
多分、完熟した複数の果物の良いところだけをとったような、といえば褒めすぎかもしれませんが、そんな感じでした。

食べ終えて答えを教えてもらったら、「ホオズキ」だって。
一瞬、「嘘でしょう」。
ホオズキって毒素が含まれているという記憶が頭の片隅にかすかに残っていたからです。
さては好奇心の強さと食い意地を利用されて毒殺を企てられたかなどとあらぬ妄想にかられながら、正体を訊ねたらホオズキはホオズキでもショクヨウホオズキという別の種類なのだとか。
来年、種を蒔いて育ててみたらと数粒渡されました。

夏物野菜の種蒔きや植え付けなどが一段落したところで、ふと思い出しました。
どうすれば良いのか分からず、実そのものをポットに植えたり、実をつぶして種を出して蒔いたりしました。
しかし畑に植えた野菜の世話や草取りなどに追われて放置状態に。
気付いたらどのポットからも芽が出て、葉をつけていました。
植物の生命力の強さに改めて感動させられると同時に、手抜き農法になっている自分に反省しながら、さっそく畑に定植しました。

今月に入りホオズキ特有のかわいらしい紙風船のような袋が姿を現しました。
最初は緑色で徐々にベージュ色に変化し、ある日突然ふわりと地面に落ちてきます。
これが完熟した証とか。
袋を破ると中には、毒殺されかけたと勘違いした小さな実が。
口に含んだら、当たり前ながら去年と同じように爽やかな甘さが広がりました。
ネットで検索したら、欧米では昔から食べられていたようですが、日本ではまだそれほど普及していないのだとか。
料亭や高級レストランで提供されている、といった説明も。
種類はいろいろあるようですが、わが菜園にあるものが何かはまだ調べていません。
何歳になっても知らないことが次々と出て来るもんですね。

山形市周辺のソバ畑は真っ白いうねりの季節を終え、収穫時期に向かっています。
ことしも美味しいお蕎麦に仕上がるのは間違いなさそうです。
新蕎麦を堪能できる日を心待ちにしております。
(2022/09/29)