やまがた辻蕎麦 のすべての投稿

2023年 3月~4月号 辻蕎麦便り

弥生。

ことしは雪が2月下旬に早々に消えたので、温かくなる日も遠からずと期待を膨らませました。
しかしそうはいきません。
気温はなかなか上がらず、天はのらりくらりと春の訪れを拒んでいるのではないかと恨み節を言いたくなるような1カ月間でした。
朝、目を覚ましても、外が薄暗いうえに肌を刺すような寒さでは布団から抜け出すのも一大決心が必要です。

「毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは」。
「いつまでも寒いね」と語りかけた俳人正岡子規に、お母さんが返した言葉を作品にしたといわれています。
3月中旬になるとこの句が自然に浮かんできます。
この時期、青空のなかに真っ白に染め上げられた月山や朝日連峰がそびえているのを目にすると、じっとしていられない、浮き立つような気分になります。
空の青さも、山の白さも真冬のそれとはどこか色が違うのです。
それが“行動”のスイッチを押すのでしょうか。

わが菜園にある梅の老木も陽だまりになっているところから一輪、また一輪と可憐な花びらが「うーん」といいながら背伸びしてきます。
足元では、雪の下だろうと氷点下だろうとものともせずに成長し続けた雑草が前後左右に旺盛に勢力圏を拡大しています。
ことしもいよいよ雑草との戦いの始まりです。

山形の桜の話は4月に書くものと思っていたのですが、どうやら近い将来はそうでなくなりそうな雲行きに。
インターネットで今年の開花予想を見ていたら、なんと開花日が4月1日、満開日は4月5日とありました。
山形市内の花見といえば4月中旬です。
年によってはゴールデンウイークに満開になり、しかも花びらに雪が舞い降りるといった光景も。
雪国では時としてそういうこともあるのです。
それが4月1日に開花とは。
平年より2週間近く早いそうです。
小中学校の入学式より前に開花するのは想像できません。
「ホントかいな」と思いつつ、山形市の桜の名所霞城公園に足を運びました。
満開の紅白の梅に混じってエドヒガンが五分咲きくらいになっていました。
これなら4月早々に開花し、1500本に上るソメイヨシノがお堀の水面をピンクに染める日も間もなくでしょう。
コロナによる規制が解除され、ことしは以前のような花見の賑わいが戻ってくるということで嬉しさもひとしおですが、その一方で異常気象がここまできたのかと考えさせられると怖さもあります。

桜前線は暖かい九州から始まり、次第に北上しますが、近年はそうでなくなっています。
九州や四国、中国より東京の方が早いのです。
「休眠打破」といって、桜が花を咲かせるには一定期間相応の低温にさらされることによる樹木の目覚めが必要です。
ところが地球温暖化の影響で九州などでは「休眠打破」がおきにくくなっているというのです。
気温がしっかり下がらないので、咲いて良いものやら悪いものやらといった寝ぼけ状態になるのだとか。
こうした状態が続くと、南の方では桜の名所や桜花爛漫の光景が姿を消す可能性もあるといわれています。
日本の大切な原風景が消失していくことだけは勘弁してほしいものです。

2023年 1月~2月号 辻蕎麦便り

大雪に見舞われ心身ともに疲労困憊状態だった昨年と違い、ことしの山形市周辺の年明けは比較的少雪で推移しています。
元旦の天気予報は余り芳しいものではありませんでしたが、8時過ぎに雲が切れて青空が広がり、太陽がしっかり顔を見せてくれました。
たまたま外にいてこの様子を目にすることができました。
初日の出ではありませんが、雲を押しのけて射し込んでくる強烈な光はなにやら神々しく感じられ、思わず合掌してしまいました。
長引く新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う惨劇と世界的な経済混乱など地球的に人々を苦しめている物事が一日も早く、いや一瞬でも早く治まり解決されるよう願わずにいられませんでした。

降雪が少ない上に、気温も比較的高めだったこともあり、10日過ぎには道路どころか庭からも白い世界が姿を消しました。
ひょっとしたら2020年1、2月のように雪のない冬になる。
除排雪に汗をかくことも無くなるのではと期待半分、植物に与える影響が大き過ぎるかもなど不安半分で空を見つめていました。
わがささやかな菜園では収穫し残した野菜たちが白い衣を脱いで姿を現わすほどに。
雪下の野菜は自らの凍結を防ぐために糖分を創り出すので、より甘みを増します。
これを味わわない手はないとさっそく白菜などを取り入れて鍋物に。
思いもかけないプレゼントで、味がしっかりしているうえに口の中に入れるととろけるような柔らかさ。
あまりの美味しさに酒量もアップしてしまいました。

ところがほどなく「24日頃から10年に1度の最強寒波に警戒を」との天気予報が繰り返されます。
昨年の再来かよ、とうんざりしていたら、「西日本各地で大雪」のニュースが流れた25日朝になっても、ふわっとかぶさっている程度。
鹿児島市の友人に「けさ9時に山形市の積雪が鹿児島市と同じ2㌢になりました。いつもならほとんど雪のない仙台が9㌢。山形市が東北の県庁所在地で最も少ない。初めてじゃないでしょうか。これも異常気象?」とメールを送ったら、桜島の雪景色を添付し「結構降りました。雪に慣れていない南国はいろいろと大変です」との返信がありました。
その後も雪はさほどではありませんが、気温は下がりっぱなし。
連日の真冬日続きで家ごと冷凍庫に入っているよう。
高騰している電気料金がちらつくものの、暖房を高めに設定しないと耐えられません。
もういい加減にしてほしい。
寒波が去ってエネルギー価格を元に戻して、雪国の人たちの共通した願いではないでしょうか。

今年もより美味しいお蕎麦を目指して精進してまいります。
どうかよろしくお願い致します。
(2023/01/31 辻蕎麦)