霜月。
季節は巡る。
地球温暖化で年ごとに異常気象が異常気象でないような気がしてきています。
それでも時はしっかり刻んでおり、ことしも降雪のシーズンを迎えました。
山形や天童などでは今月末になって、早朝の庭先や家々の屋根に白いものが目立つようになってきました。
蔵王連峰をはじめ朝日連峰、月山などで出羽三山も真っ白な頂がまぶしく感じられます。
外の景色が白一色になる日も近いのですが、そんな中でほっこりさせてくれるのが干し柿です。
昔ほど多くはありませんが、軒先に縄のれんのように暖かそうな柿色が連なっているのを眼にすると幼心に帰るような気がしてなりません。
以前にもここで触れたことがありますが、剪定どころか収穫もしない「荒れた柿の木」が随分目立つようなってきました。
手間暇かけて干し柿を作るより、ケーキを買ってきた方が簡単で美味しいものを口にできる、といったこともあるのでしょうが、やはり超高齢化社会が色濃く反映しているようです。
所有者が高齢で樹木の手入れができなくなり、伸び放題に伸び、収穫もままならなくなってしまったというところでしょう。
日本の原風景のひとつともいえる干し柿の縄のれんが産地以外では姿を消すかもしれません。
ちょっと寂しい気がします。
もっとも幼い時からそのような光景を目にしたことのない人々にとってはぴんとこないかもしれませんが。
異常気象といえば、今月わがささやかな菜園で珍事が相次いで起こりました。
恐らく掘り残したと思われるジャガイモが葉物野菜の畝で数本芽を出し、どんどん成長したのです。
最初は「なんで今ごろ」と首を傾げましたが、邪魔にならないので放っておきました。
当然のことながら追肥や土寄せといった普通のジャガイモ栽培のようなことは一切やりません。
最低気温がマイナスに突入する寸前に、このままでは枯れるだけだからと引き抜いてみました。
なんとピンポン玉を一回り大きくした「新ジャガ」が数個出てきました。
山形盆地では4月中旬から5月頃に種芋を植えて、7、8月に収穫するのが一般的です。
まさか11月下旬に「新ジャガ」を収穫できるなんて。
せっかくなので蒸していただきましたが、ほくほく感があり、味は凝縮されて濃厚でした。
秋になって芽が出たのはジャガイモだけでなく、トマトもあちこちに出てきて茎を伸ばしていました。
こちらはさすがに花を咲かせたり実をつけるまでにはいきませんでしたが。
花を咲かせたのはサヤエンドウ。
白い花を次々に開かせ、楽しませてくれました。
もっとも最低気温が急激に下がり、月末までにはいずれも自然の摂理に戻ってしまいましたが。
来年以降もこうしたことがあるなら、ちょっとやってみたいことも出てきています。
菜園の野菜たちは異常気象でいろいろ傷めつけられましたが、楽しみも残してくれたようです。
いよいよ師走。
辻蕎麦の工房では、新たな年に向かい幸多かれと期待と希望を込めてお召し上がりになる最高の年越しそばをお届けするため精魂込めて作業を続けております。
<2019年11月30日>