2018年3月~4月 辻蕎麦便り

弥生。

北国山形にもようやく春の足音が聞こえてまいりました。
今年の冬は近年になく厳しく長かったように感じます。

気象庁のデータベースに「積雪の深さ一覧表」という項目があります。
都道府県の主な観測地点の積雪量が分かるようになっており、1時間ごとに更新されます。
山形県内の観測地点は14。
首都圏などの方は驚かれるかもしれませんが、3月25日現在でまだ8地点で積雪を観測しているのです。
わが国有数の豪雪地帯で知られる大蔵村肘折の255㌢、西川町大井沢の177㌢はともかく、米沢市でも13㌢、尾花沢市70㌢などとなっています。
山形市や天童市などは10日ころには消えていましたが。
今シーズンは降った雪も多かったのですが、気温がいつもより低かったのが積雪量の多さにつながったような気がします。
降り積もっては消え、降り積もっては消えすれば積雪量はさほどでありません。
しかし気温が低く、降った雪が融けなければ、そのまま積み増していくだけです。
この気温の低さはやはり異常気象のなせる技でしょうか。

3月は別れと旅立ちの時といわれます。
これは人に限った話ではありません。
山形県は最上川を中心に1万羽をゆうに超える全国トップクラスの白鳥の飛来地。
白鳥たちは雪解けと歩調を合わせるように北帰行への準備を始めます。
張りつめた白一色の世界が緩みだし、田んぼの稲の切株などが顔をのぞかせると、白鳥たちは最上川などのベースキャンプからせっせと通い始めます。
長旅には当然のことながら膨大なエネルギーが必要。
収穫時にこぼれ落ちた稲穂などを懸命に啄みながら蓄えるのです。
こうした光景は人里離れた田園地帯だけで繰り広げられるわけではありません。
山形や天童など市街地近郊の田んぼでも車窓から間近に目にすることができます。
ただ雪が多いと、「白」と「白」ですから、目を凝らさないと見つけるのは大変ですが。

以前、白鳥の生態に詳しい野鳥愛好家にいろいろ説明してもらったことがあります。
その中で、今も鮮明に記憶しているのが求愛行動。
自分の伴侶を求めて動き回り、2羽の気持ちがぴったり合った時にとるポーズがあります。
互いの首と胴をぴったりつけるのです。
そうするとそこにはハートの形が。
もっとも実際現地で観察すると、白鳥たちは動いているのでなかなかきちんとしたものを見るのは容易でありません。
しかし写真に撮れば本当に見事なハートに。
つがいの愛の深さがしっかり感じ取れ、織り成す自然の造形美に感動しきりです。

白鳥