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2025年 8月~9月号 辻蕎麦便り

「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(古今和歌集)。
「処暑」を迎えたのですから、こんな忍び寄るような季節の変化を感じたいのですが、どうもそうはいかないようで。
わが菜園の野菜たちは、ようやくいつもの夏がやって来た、と感じたのか一斉に動き出したのです。

7月の平均気温は観測史上最高だったとか、山形周辺の降雨量は観測開始以来最少だったとか、7月といわず5月ころから異常な天候が続きました。
例年のごとく種を蒔き、苗を植えたにもかかわらず、ナスやオクラなどはひざ丈くらいでストップし、トマトやキュウリはなかなか花を咲かせません。
6月ころまでは、土づくりか、肥料の問題か、水不足かなどいろいろ考えてそれらしい対応もしましたが、7月に入りはっきり高温障害ということが分かりました。
雨が降らないので、地面に熱が溜まるだけ溜まり、相当に環境が悪化していたのですね。
枯らすことさえしなければいずれ何とかなるのではないか、と藁にも縋る思いで潅水だけは欠かさずやりました。

8月に入り地表温度が50℃を超す状態になると雑草も枯れ始めたのです。
さすがの雑草も枯れるんだ、など妙に感心してしまいました。
そのころになると県内各地の神社で雨乞い神事を行ったというニュースを目にするようになります。
それが奏功したんでしょうか、5日ころから雨が降り出しました。
文字通り干天の慈雨。
生物が一気に息を吹き返したようでした。
1週間あまり断続的に降ったこともあり地表の温度がぐんと下がったのでしょう。

地面が熱過ぎて伸びられずにいたカボチャやスイカ、メロンなどが一斉に動き始めたのです。
蔓が這い出し、受粉した雌花の果実も膨らみが目立つようになりました。
ナスやオクラもぐんと背が伸びました。
つい数日前まで息絶え絶えになっていたとは思えないほどです。
本来なら5月から7月にかけての景色が今月下旬になってようやく訪れたのです。
長期予報では北日本はしばらく平年より気温が高いということですから、スイカやメロンを味わえる日が来るかもしれません。
どんな味かはともかくちょっと楽しみでもあります。

四季が日本の気候の特徴だったはずですが、3季か5季になりそうな気配が濃厚です。
「夏が終わるとそのまま冬と感じられるようになる可能性も…」といった気象関係者の話がラジオから流れて来ても驚かなくなった自分に驚きました。
恐らく近い将来、猛暑夏または酷暑夏の両側に夏をはさんで冬の3季か、上手くするとかすかに春と秋が残る5季にかわるのではないでしょうか。
俳句の季語なんてどうなるんでしょうね。
ふとそんなことが浮かんできました。

(2025/08/31 辻蕎麦HP)

2025年 6月~7月号 辻蕎麦便り

今年はトマトの苗の購入をやめよう。
4月末にホームセンターの野菜苗売り場をながめていて、ふとそんな思いが浮かんできました。
ここ数年、野菜の種や苗、肥料などが急騰していることもありますが、それより自然にゆだねた野菜作りをするとどうなるのか、ハウスで加温して育てた苗と何かが違うのではないか、そこに興味がわいたのです。

前年にトマトを植えた畝周辺から翌春に発芽してくることがよくあります。
熟したトマトが落下して、その種から芽が出るのですが、翌年、他の野菜を植えると、これは邪魔者でしかありません。
せっかく出てくるのだから活用しなければ。
植物が発芽するには一定の気温が必要です。
さまざまな高温障害を引き起こした昨年の5月と打って変わって、今年は比較的低温で推移しました。
その分発芽も遅かったのか、6月になっても影も姿もありません。
無謀な試みだったか、と不安がよぎり始めたころにようやく待望の芽を確認。
苗がほどよいサイズに達したものから順次、ことしのトマトの畝に移植しましたが、全部で20本ほどありました。
ただどの苗がミニなのか、中玉なのか、大玉なのか皆目見当がつきません。
まさかすべてが同じ種類ということはないと思うのですが、それは実をつけてみてのお楽しみということでしょう。

ホームセンターで求めた苗に比べると、生育状況は2カ月近い遅れ。
周辺の畑のトマトは実がかなり大きくなっていますが、こちらはようやく花をつけ始めたばかりです。
当然のことながら「旬」も違ってくるのかも。
「旬」。
あらためて説明するまでもありませんが、野菜や果物、魚介類がもっとも味の良い時期のこと。
文字そのものは10日間を表す意味だそうですから、わずか10日間くらいが最高の味わいを発揮するということなんでしょうね。
気温の乱高下が激しい異常気象の中、自然にゆだねているトマトの「旬」はどうなるのか。
真っ赤に熟れるのを今から楽しみにしています。

びっくりというより信じられない出来事が。
26日朝、東根市の山形空港にクマ1頭が侵入。
飛行機10便が欠航したというのです。
空港はかなり高いフェンスやコンクリート塀で囲まれているうえに、すぐそばに国道13号と山形新幹線が走行する奥羽本線があります。
奥羽本線はともかく、国道13号は夜間でも大型トラックが行き交う交通量の多い幹線道路です。
しかもその東側は数キロにわたる市街地で、人目に触れず山からどうやって空港までたどりつき、中に侵入したのでしょうか。
関係者は捕獲に追われていますが、月末になっても捕らえたニュースは流れてきません。
周辺にはサクランボをはじめ果樹畑も多く、万が一にも人的被害が発生するようなことがなければ良いんですが。

(2025/06/30 辻蕎麦HP)