2025年 7月~8月号 辻蕎麦便り

「ところによって、ところによって」。
懸命に念じながら空を見上げる。
何の呪文かって?
テレビやラジオで気象予報士が「晴、ところによって雷が発生し雨になることも」と報じているのを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
山形市周辺は6月、7月と極端な高温と雨不足に見舞われています。
わが菜園は「ところによって」が全く該当せず、周辺の畑を見回しても完全に干上がった状態で、ほとんどの野菜はこれ以上ないくらいうなだれています。
干ばつに襲われ、天を見上げて祈りながら死への恐怖と闘った古人の心情の一端がうかがえるような気がします。

異変を感じたのは、6月下旬ころでしょうか。
元気だった野菜の生育にブレーキが掛かったようになったのです。
堆肥や肥料が少なかったのか、苗を植える時期が遅かったか、水不足かなどいろいろ思い浮かべて手当てを施したのですが、一向に動きを見せません。
ある日、山芋の蔓の先が焦げ茶色に変色し枯れていました。
黒マルチに触れている部分がそうなっており、病気ではなく高温が原因と分かりました。
ひょっとしたら他の野菜の生育不良もそうなのか。
インターネットで野菜と高温障害に関するサイトを開いたら、多くの事例が。

夏野菜は気温が高くなるにつれ生育が活発になると単純に思い込んでいました。
しかしそうではなかったんですね。
当たり前のことですが、人間だって猛暑になれば体調がおかしくなります。
今じゃ連日行政から熱中症特別警戒アラートが出ているほどですから。
植物も同じで、35℃を超すような高温になると生育がストップするだけでなく、花をつけない、実は拡大しないなど様々な影響が出るようです。
昆虫類の動きも極端に鈍くなるので、受粉ができず、いくら雌花が咲いてもそのまま枯れていくだけです。

雨は水分を補給するだけでなく、地面の温度をしっかり下げてくれます。
菜園の野菜には如雨露でせっせと水分補給をしていますが、地温を下げるなど程遠い話です。
ちなみに山形市で38.5℃を観測した29日に、庭の土の上に寒暖計をおいてみたところ、瞬く間に50℃を超しました。
目盛りが50℃までしかないので、実際何度だったのかは確認できません。
近くの石を触ると思わず「熱つっ」。
ひょっとしたら目玉焼きを作れるくらいかも。
気象庁のデータによると7月の山形市周辺の総雨量は8㍉。
猛暑日が2週間以上も続く中で、この雨量では霧吹きで吹いたほどにもならないでしょう。
地面には熱が溜まりに溜まっている感じで、「灼熱地獄」という言葉がぴったりです。

そろそろ秋冬野菜の準備に入る時期ですが、こんな状態がいつまで続くのでしょうか。
種まきは言うに及ばず、このままでは何もできません。
「本当にひどい。どうにもならない」と隣の主が恐縮しながら届けてくれた極小粒の枝豆を口に運びながら困惑を募らせています。
(2025/07/31 辻蕎麦HP)