「最新記事」カテゴリーアーカイブ

2023年 10月~11月号 辻蕎麦便り

「畑のない柿農家が…」。
ラジオから流れてきた話に「えっ、どういう意味?」。
農地がないのに、どうやって柿を栽培するの、と首をかしげながら聴き入りました。
中国地方から秋田県に移住した男性が、多くの放置されている柿の木に着目。
熟した後にただ落下させるのはもったいない、収穫してドライフルーツなどに加工すれば有効活用できるのではないかと、所有者と交渉し実現にこぎつけたという話でした。

放置されている柿の木は全国的に年々増えているのではないでしょうか。
山形でも郊外をドライブしていると、伸び放題の枝に鈴生り状態に実をつけた柿の木がやたら目につきます。
伸び放題ということは剪定をしていない証で、せっかく実った柿も鳥のエサになるか、はたまた落下してしまうしかありません。
山裾に近い集落などでは、それこそ熊を招き寄せる格好のエサになってしまいます。
この男性のような活用法が広まればと期待しています。

熊といえば、その目撃情報や人的被害がかつてない数にのぼっています。
7月に東北森林管理局が行ったブナの開花状況調査を取り上げました。
東北各地のブナの実が凶作という予報が出され、それを主な食料にしている熊の動向が気になると書きました。
気温がやや下がり始めたころから人里へ出没する熊の数は尋常でありません。

連日のように目撃情報が新聞やテレビなどのニュースになっていますが、ことしの特徴はなんといっても人的被害の多さです。
数年前まで目撃されるのは林道沿いや山裾の果樹畑などでしたが、今や住宅街のど真ん中というのも珍しくありません。
熊に襲われてケガをした人は全国で170人を超しており、すでに過去最多を更新しています。
まさかこんなところにいるわけはないという住宅地で、突然目の前に現れたら驚きと恐怖は言葉にならないでしょう。
山中のエサ不足は果たして今年だけのものなのか、それとも異常気象とのかかわりでこの先も続くのか気になるところです。

高温、少雨に痛めつけられたわが家の菜園の今年の作業も終わりに近づいています。
かつて経験したことのない現象が次々に出現し、戸惑いの連続でした。
気温が高すぎて野菜の生育がストップすることは、文字の上では知っていましたが、まさか現実になるとは。
収穫サイズに至らずそのまま枯れてしまうもの、気温が下がった9月下旬ころから急に息を吹き返し急成長を遂げるものなど様々です。
山形ではなく、南国の遠い見知らぬ土地で野菜作りをしているような気がしました。
熊のエサ同様に、こちらもこの先どうなるんでしょうね。
(2023/10/30)

2023年 9月~10月号 辻蕎麦便り

「暑さ寒さも彼岸まで」。
今年ほどこの慣用句を実感させられたことはなかったかもしれません。
今夏の記録詰めの猛暑を引きずり、9月に入っても最高気温が連日30℃を超し、最低気温も22~23℃前後で推移。
しかも湿度が高いのか、空気が肌にまとわりつくようで、山形盆地の爽やかな初秋とはかけ離れたものでした。
ひょっとしたら秋を飛ばして真夏からいきなり初冬になるのではないかなどという突飛な考えが頭をかすめたりして。

それが彼岸の入りの20日以降、その直前までとは打って変わって秋めいてきました。
最高気温が25℃前後、最低気温は一気に12、13℃まで下降。
蒸し暑く寝苦しい夜を過ごしていたのに、一転して明け方などは肌寒さを覚えるほどになりました。
あまりの急変に体も容易に対応できません。1日の寒暖差がやたら大きいので、長袖か、半袖かなど衣服を選ぶのも一苦労です。

高温障害などで生育不良に見舞われていた野菜たちですが、中には気温が下がるにつれて元気を取り戻したものも。
わが菜園で目立つのがコリンキー。
山形県生まれの主に生で食べるカボチャです。
サラダや浅漬けなどにしますが、皮はきれいなレモンイエローで、さくさくとした爽やかな歯ざわりが楽しめます。 
  
例年通り、5月の連休後に定植し順調に育っていたのですが、なぜか花芽が極端に少ないのです。
しかも受粉し果実が膨らみ始めても、大きくなる前に腐れてしまうのです。
どうやら高温で果実の細胞が痛めつけられて腐食するようです。
今年の収穫はもう無理と諦め、今月上旬にそろそろ蔓を撤去しなければと考えましたが、あまりの暑さに作業を断念。
放置したままの蔓は空きスペースで縦横に伸びていました。
ところが気温が下がりだしてからは、受粉して誕生した小さな果実が腐食することもなく、食卓にのぼるサイズに成長。
まさかこんなことになるなんて、何が幸いするか分かりません。

もっともこれは珍しいケースかも。
多くの農作物が高温、さらに地域によって極端な少雨によって大きな被害が出ているようです。
山形の秋の風物詩「日本一の芋煮会」が17日、4年ぶりに通常開催されましたが、実行委員会では材料のサトイモの調達に苦労したようです。
このイベントで提供されるサトイモは毎年、山形市総合スポーツセンター近くの畑で栽培されています。
その前を時折通り掛かるので、車中から成長ぶりを眺めていますが、今年は様子が変でした。
例年に比べて茎の背丈が短いし、葉も小さいのです。
大丈夫なのかな、と心配していたら、例年の80%ほどしか収穫できなかったとかいうことです。

結構長年にわたりここで栽培していますが、これまでこんなことは記憶にありません。
「野菜の値段が上がってきている」というニュースが目立つようになりました。
秋冬物野菜はどうなるのでしょうか。
物価高の中、これ以上、家計を直撃しないよう順調に育ってと願うしかありません。
(2023/09/29)