やまがた辻蕎麦 のすべての投稿

2024年 6月~7月号 辻蕎麦便り

数ある全国のJA産直施設で売上高トップクラスを誇る東根市の「よってけポポラ」。
主力商品はいうまでもなくサクランボ。
シーズンになると、施設の前に宅配会社の受付専用プレハブが建つくらいですから、販売されるのもすごい量です。
ずらりとならんだサクランボの化粧箱やパックの中から品定めして次々に買い物かごへ入れレジに向かう、これがいつもの光景です。
ところが今年は。

首都圏の知人に季節のあいさつ代わりに送ろうと、平日の11時近くに訪れました。
数百台は収容可能な駐車場がほぼ満杯。
しかも車のナンバーが仙台、宮城を中心に秋田、新潟、首都圏、さらには高知、広島など西日本のものも。
山形ナンバーは10台に1台もありません。
いやな予感が膨らみました。
例年ならこの時間でも、生産者が次々と搬入してくるので品選びにさほど苦労しないのですが、肝心のサクランボがほとんど見当たりません。
空っぽになった販売台の周囲を多くの人が右往左往しているだけ。
時折生産者がサクランボの箱を抱えてやってきますが、売り場に姿を現した瞬間に争奪戦が。
「販売台の上に置いてから手にするように」と再三場内アナウンスが響きます。
この日はあきらめ数日後に再チャレンジ。
9時開店なので、8時30分ころに行きましたが、既に100人近くが行列を作っていました。
まさかここでサクランボを求めるのに開店前から並ぶことになるとは。
列の前後の人たちの話が耳に入ってきます。
「きのうは9時30分に来たけど、もう空っぽだった」「この前の日曜日は300人以上が並んで、場内は身動きがとれなかったって」。
周囲を果樹畑で取り囲まれ、サクランボシーズン以外は比較的静かな施設の前で交わされている会話とは思えません。
何とか目的は果たしましたが、値段の高いのにはびっくり。
1㌔箱で8千円、1万円で驚いていたら、その隣は1万8千円だって。
それでも買い物かごに入るんですよね。

実は行列を作る施設の周囲に、今年は品薄で販売も早めに終了するというお知らせの立て札が立っていました。
昨年夏の高温が原因の双子果の発生に加え、5月、6月の高温続きで、サクランボの熟度が一気に進みました。
そのスピードに収穫が追い付かず、うるんでしまい廃棄せざるを得なくなったということです。
この1年間懸命に手を掛けてきた生産者の心情を思うとやりきれません。

国の地理的表示保護制度に登録されている地域ブランド「東根さくらんぼ」の品評会で最高賞を受賞した1㌔詰サクランボが豊洲市場で145万円の過去最高額がついたり、県が開発した大玉のサクランボ紅王が太田市場で1個10万円で落札されたりと、びっくりするようなニュースも相次ぎました。
一体どんな人の口に入るんでしょうね。
それはともかく、一般消費者が手ごろな値段で季節の味を楽しめる機会が失われるようなことだけは勘弁してほしいものです。

(2024/06/30 辻蕎麦HP)

2024年 4月~5月号 辻蕎麦便り

2月に早々と春が来たと思ったら、3月には冬に戻ったような日々。
多分、3月の気温として低過ぎるということはなかったのでしょうが、一度暖かさに慣れた体にはより厳しく感じられました。
ものごとには順番があるのだから、それらしくやって来てくれないと。
うっかりひいてしまった風邪もようやく快方に向かったと思った瞬間に、大きく転換した気温に合わせて再び悪化の道へ。
4月に入り暖かさが続けば完治するのではと期待したのですが、今度は早春と真夏の繰り返し。
最高気温が15℃前後の日々が続いたと思ったら、いきなり夏日に。
そうこうするうちに真夏日の天気予報も出てくるし、この先どうなるんでしょうね。
年間で一番爽やかな風薫る5月はこれからなんですよ。

3月の気温の足踏みで、昨年史上最も早かった桜の開花は元に戻りました。
山形市では7日にソメイヨシノの開花宣言が出されましたが、平年より6日早く、昨年より7日遅いということでした。
この後、花冷えなども絡み、花は長持ちし、しかも比較的天気に恵まれた日々が続いたために、お花見には最適な環境になりました。

何年ぶりですかね、こんなにお花見を堪能したのは。
夫婦だけで、それに孫たちを誘ってと、約1500本のソメイヨシノが咲き誇る山形市の霞城公園に何度も足を運びました。
元山形城址の霞城公園。
土手にそびえたつソメイヨシノの大木から重さで折れないかと心配するほどまでに盛り上がる花の房がお堀の水面すれすれに垂れ下がるさまは圧巻です。
山形城といってもなじみのある人は多くないでしょうが、実は全国で5番目の規模を誇るお城なのです。
ちなみに山形より大きいお城は江戸城、大阪城、小田原城、名古屋城ですって。
名城に肩を並べていたのですね。
往時のまま残っていたら、どんな景色になっているのでしょうか。

開花宣言から数日して訪れた時は驚きのあまり唖然としてしまいました。
平日の昼下がり。
山形のどこにこんなに人がいたの、と言いたくなるほどの人の波が。
東京の上野のお山には及びませんが、この時間のこの山形でこの賑わいぶり、なぜ?そして日曜日の昼過ぎはより上野のお山に近づいた感じに。
ずらりと並んだ売店で、花より団子の団子は「本日分売り切れ」の張り紙だけ、焼きそばのコーナーは行列の最後尾が見えないほど。
明るいうちに食べられるのかと、他人事ながら心配になるほどに。
玉コンニャクや、唐揚げ、うどんなど他の食べ物の前にも行列が。
周囲からは中国語に混じって、ヨーロッパ系の言葉も耳に入ってきました。
好天に誘われて山形市内外の人々も例年になく多かったようですが、それに海外組も加わったのが賑わいの要因だったようです。
霞城公園のお花見が国際的になり、多くの外国の人々と一緒に楽しめるというのはワクワクしますね。

桜花爛漫の候を存分に楽しみ、畑の水分が抜けないので耕しにくいことを言い訳に菜園から遠ざかっていたら、あっという間に日にちが過ぎました。
桜が咲いたらジャガイモの植え付け適期。
慌てて作業を始め、桜の花びら数枚が残っている間になんとか植え付けを終えました。
下旬に入り高温続きで雑草が急成長しほぼ草原状態に。
異常気象云々はいったん脇に置き、気力を振り絞ってまずは播種作業をしなければ。
種を蒔かなきゃ何も出てきませんからね。

(2024/04/30 辻蕎麦HP)