皐月。
「1日の気温格差が大きいので体調管理に気を付けてください」。
テレビやラジオの天気予報の中で、気象予報士が呼び掛けるこうした内容の注意を耳にすることが実に多くなりました。
5月といえば1年の中でもっとも穏やかで過ごしやすい季節と思っています。
いや正確に言えば「思っていました」かな。
「風薫る五月」がキャッチフレーズになるくらい爽やかなはずなのに、ここ北国の山形で「明日は猛暑日に…」などという予報が流れてくるのですから。
「爽やか」と「猛暑日」はどう考えてもそぐわないでしょう。
実際は最高気温が34.6℃で、猛暑日まではあと一歩及びませんでしたが、それにしてもどう考えたって5月の気温ではありません。
おまけに最低、最高の気温差が20℃以上という日も結構あり、たった24時間の間に早春から真夏までへの急変にどう対応すれば良いのさ、とぼやきたくなります。
体調維持も容易でありません。
そんな暑い1日、高台から山形盆地を眺めたくなり林道まがいの道をドライブしてきました。
山形盆地は南北に約40㌔、東西に10㌔~20㌔あり、田園が広がるなかに街や集落が点在しています。
5月の盆地の光景は、伝説の「藻が湖」に一番近いのではないでしょうか。
田植えの準備のために一斉に水を張られて果てしなく広がる水田はまるで湖のよう。
大昔(何年前とは問わないでください)、最上川は村山市の碁点で堰き止められており、盆地が巨大な湖だったといわれています。
その名残りが地名として伝えられ、東側の際が東根、現在の東根市、西の際が西根、現在の寒河江市西根だというのです。
今ではちょっと場所を思い出せませんが、東根市の山裾には、「荷渡し地蔵」といったお地蔵さんがありました。
科学的には地殻変動によって村山市碁点の堰き止めが解消され、最上川となって水が流れ出し、山形盆地を形成したようです。
人々が住む以前の事象なのでしょうが、湖は一気に消滅したのではなく、徐々に狭まっていき人間が生活を始めたころにも残っていたのでは。純白に輝く周囲の高い山並みに囲まれ、青空を映し出す広大な水田をぼんやり見ていると、古代の人々が木船を力強く漕いで行き来する姿が浮かんできます。
どんな風が彼らの頬を撫でていたのでしょうね。
もっとも「現代の湖」もめっきり減って、新たな白い波を湧き立たせています。
サクランボやリンゴなどの花で、桃などのピンクも混じり咲き誇るさまは桃源郷を彷彿させています。
湖が狭まって、桃源郷が広がるのは目の保養には良いのですが。
その裏にはいろいろな事情があるのでしょうね。
(2023/05/30)