2022年 6月~7月号 辻蕎麦便り

水無月。

「涼しさを通り越して寒い。我慢できずにストーブを出したよ」
「こんなに暑くて、この先どうなるんだ。考えるだけでうんざりする」。
どちらも今月耳にした言葉です。
真逆で同じ時期の話とは到底思えません。

先月もちょっと紹介しましたが、ささやかなわが菜園の野菜たちの状態がおかしい。
5月はともかく、6月に入ってからも気温がなかなか上がらない。
例年に比べてことしは低いのかななどと思って、気象庁のデータをながめて唖然としました。
6月の前半、15日までの平均気温は連日15℃前後で推移し、13℃や14℃台の日もありました。
ちなみに昨年6月の同じ時期の平均気温は20℃前後ですから、5℃も低かったのです。
データをグラフ化していたので昨年と今年の分を並べてみましたが、その差がよりはっきり分かりました。
野菜は一定の気温がないと発芽しないし、生育もままなりません。
そこまで届いていなかったのです。
蒔いた種も発芽しないまま湿った土の中で腐食したり、虫の餌食になってしまうのです。
それが一転、16日からは急上昇。
連日20℃を超すどころか、瞬く間に25℃になり、なんと28℃台までに。
ちなみに昨年は6月中に平均気温が25℃を超した日は1日もありませんでした。
こんなに極端な変化にさらされると、人間だけでなく、野菜たちも容易でないようです。
数日前まで元気に葉を繁らせていたのに、げんなりして枯れてしまったのではないかと心配になるほどのものも。
若干気温が下がる未明にほっと一息ついているのか明け方は元気を取り戻しますが、太陽が昇るにつれてうなだれてきます。
こんなことが「平年並み」になるんですかね。
勘弁してほしいものです。

山形の6月はやはりサクランボ。
郊外のサクランボ畑では鮮紅色の実が吹き抜ける風に揺れています。
霜による被害などで不作に見舞われた昨年に比べ今年の出来は良かったようです。
23日には山形県が20年余りの年月をかけて開発した新品種「やまがた紅王」が県内や首都圏で先行販売されました。
100㌘(6粒から15粒くらい)2千円から5千円とお高めのお菓子並み。
サイズは500円玉ほどということですから佐藤錦などに比べてかなり大きめです。
糖度が高く、パリッとした歯触りだとか。
「佐藤錦」と「紅秀峰」の橋渡しになる時期に収穫期を迎えるということで農家にとってまさに助けの神でしょう。
一目だけでもお目にかかりたいのですが、出荷量が少ない今シーズンは無理ですかね。
今やサクランボの代名詞でもある「佐藤錦」が東根市で誕生したのが1912年。
それからちょうど100年後に世に出た「やまがた紅王」にも頑張ってほしいものです。
(2022/06/29)

2022年 5月~6月号 辻蕎麦便り

皐月。

山形市周辺で家庭菜園を手掛けている人たちにとって、4月下旬から5月中旬にかけてが「農繁期」のピークです。
ホームセンターや種苗店では、駐車場の一部まで売り場に変身。
キュウリ、ナス、トマトなど一般的な野菜から全く目にしたことの無い珍しいものまで数え切りない種類の苗が所狭しと並べられています。
大型連休中などは都会の通勤ラッシュ時のホーム並み。
身動きもままならない中で目当ての苗を片っ端から段ボールの箱に入れてはコーナーを移動。
レジの前も大行列です。
自分もその一員なのにかかわらず、ふと端の方からながめるとそのエネルギーに圧倒されそうです。
みんな立派や野菜の収穫を夢見て植え付け作業をするのでしょうね。

それに水を差すつもりはありませんが、異常気象が平年並みになるような昨今の天気ですから、果たしてどうなることやら。
4月末から連休明けにかけての気温はまさにジェットコースター並みでした。
1日の最低最高の気温差が20度前後、最高気温が真夏日に近い日が数日続く。
その後はいきなり15度未満に下がるなど、服装や暖房器具で調整できる人間でさえ体調がおかしくなるのに、動けない野菜たちが心配です。
この先一気に高温になったらそこで成長がストップする種類もあるのですから。

家庭菜園では苗を購入するだけでなく、種を蒔いて育てる野菜も結構あります。
それぞれの野菜によって発芽に適した気温があり、ポットの培養土や畑に蒔きさえすれば芽を出すものでもありません。
わが家でも、4月に播種した野菜の発芽率が悪く、早々に蒔き直しました。
気温に適応できないうちに種そのものがダメになってしまったようです。
菜園周辺で聞いてみましたが、多くの人たちが苦労しているようです。

そんな時にタマネギ高騰のニュースを耳にしました。
大生産地である北海道で、昨年夏に高温により大きな被害が出て不足していたところに、年明け後に出荷を見込んでいた九州産にも被害が出たのが原因のようです。
その上、新型コロナ対策で上海港が機能しないため中国産の輸入がままならない。
タマネギ1個が200円とか300円といった話を聞くとホントかいなと耳を疑いますが、消費者にしてみれば怒りあきらめが交差するかもしれません。

昨年はジャガイモの種芋が不足し、早々に店頭から姿を消しましたが、ことしはサツマイモの苗が極端に不足しているようです。
今度の入荷はこの日とこの日ですという張り紙を目にしましたが、開店早々にでも行かない限り入手できなかったようです。
瘦せ地でも十分育ち、長い歴史の中で幾多の日本人を飢餓から救ってきたサツマイモ。
それさえ影響を受けるようでは、この先の日本の食料はどうなってしまうのか。
ちょっと柄にもないことを考えてしまいました。

(2022/05/30)