2020年2月~3月 辻蕎麦便り

如月。

「えっ、何これ」。
時折り訪れるJR山形駅近くの霞城公園。
全国で5番目の広さを誇った山形城の跡地です。
今は二の丸までしかありませんが、それでもお堀には満々の水をたたえ、江戸城門に匹敵するスケールともいわれる大手門など往時をしのぶには十分な風格を備えています。

 その満々のお堀の水が徐々に目減りし、2月に入ってとうとう底が見えるようになりました。
間もなく乾ききるのではないかと思わせるほどになっています。
特定外来種の駆除で環境庁も注目しているテレビ番組「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦」に参加したわけではありません。
自然に水が無くなっていったのです。
一体どうしたんだろうといぶかっていたら、地元の新聞が取り上げその理由が分かりました。

 お堀の水は管理している山形市が地下水を汲み上げて一定の水位を維持しています。
しかし冬期間は汲み上げるポンプが凍てついて破損する恐れがあるので、毎年休止しているということです。
もっともこの時期は、お堀の周囲は雪で埋め尽くされて自然に“給水”されるし、零下の気温が続けば水面に氷がはって水が蒸発することもなくなります。
ところが今年は全国的な暖冬。
山形も例外ではなく、真冬日はなんと2月6日の1日だけ。
雪は夜半から明け方にかけて降ったものが昼過ぎには消えてしまうということが数回あっただけです。
まさかこの雪国で家の周辺の除排雪をひと冬に1回もしないで済むなど考えもしませんでした。
これでは氷がはるどころではありません。

 お堀の水は春になったら元に戻るようです。
普段はほとんど目にすることのない城の石垣の最下部の様子を見ることができます。
基礎の部分のぐり石が石垣だけなく土手の下にもしっかり施されており、これは意外でした。
休日などは多くの市民が大手門前の橋のうえから興味深そうに観察しています。
歴代城主をはじめ先人たちもさぞびっくりしていることでしょう。

 今シーズンは全国どこでも暖冬異変があるのでしょうが、わがささやかな菜園でも。
今月20日過ぎにまだ冬の気配を残す菜園を眺めていたら、大人の小指の先ほどのかわいらしいフキノトウが2個並んで頭を出していました。
2月のフキノトウなんて全く念頭になかったので目の錯覚かと疑ったほどです。
例年なら雪の下か、ようやく雪が解けて土が顔を出したばかりの時季ですよ。

 こんなことが来年以降も続くのでしょうか。
雪に悩まされないのは実に嬉しいのですが、一方では、果たしてこれでいいのかなという感覚も頭をもたげてきます。

(2020年2月27日)