水無月。
「空気神社で3日、4年ぶりに“みこの舞”が奉納されました」
というニュースを今月初めに目にしました。
懐かしかったですね。
この神社を訪ねたのは30年ほど前。
ユニークの塊のようなこの神社は1990年に最上川中流域にある朝日町の山懐深い地に造られました。
好奇心に駆られ、出来てほどなく足を運んだような気がします。
ご神体はなんと空気。
世界でたった一つの神社です。
神社の案内資料によりますと、昭和48年に町民の1人が、
「山の中のきれいな空気の中で仕事をしていると、平地で仕事をしている時よりも疲れにくい。これは、豊かな自然が作り出す澄んだ空気の恩恵である。町に空気神社を建立し空気とそれを生み出す自然に感謝しよう」
と提案したのがきっかけでした。
この事業が実際に動き出したのは10年ほどたってからで、マチおこしの一環として具体化。
有志が集い、自然環境を大切にし、空気の恩恵に感謝するモニュメントとして神社建設を企画し、町内外で募金活動を行い実現にこぎつけました。
町の中心部から車で20分ほどの山中にあります。
もっとも普通の神社のような鳥居や社殿があるわけでなく、目に入るのは玉砂利を敷き詰めて設けた枠の上に鎮座する磨き上げられたステンレス。
5㍍四方の巨大な鏡になっており、四季折々の空間を映しこみ空気を表現するのだとか。
訪れた時も青空と周囲のブナ林の緑が鮮やかに映り、同じ林の中でも不思議に空気感が違ったのを覚えています。
この巨大鏡の地下3㍍に本殿があるということですが、普通の日だったので見ることが出来ませんでした。
12個の甕に12カ月それぞれのきれいな空気を入れて祀ってあるのだとか。
6月の空気まつりで舞を奉納するのは巫女さんでなく、巫女の衣装を身に着けた町内の小学4年生から6年生の女子児童。
映像や写真で見ると、鏡面に映るブナの緑と衣装の紅、白のコントラストが実に素敵です。
いずれは空気まつりに足を運びたい、そんな気持ちを掻き立てくれます。
地球温暖化により異常気象に相次いで見舞われている昨今ですが、自然環境の大切さと空気への感謝の念をモニュメントにしようと50年も前に提案した先人、それを具体化した人々が県内にいたことを誇りに思います。
山形の6月はサクランボ一色といってもいいでしょう。
3年余りにわたる新型コロナの規制解除が後押ししたのでしょうか、サクランボ目当ての観光客数が半端でないような気がします。
山形盆地の大動脈である国道13号は車の数がぐっと増え渋滞が激しくなっています。
以前ならあまり見かけなかった西日本、さらには四国や九州ナンバーの車もさほど珍しくありません。
厳しさを強いられてきた観光関係者にとっては大歓迎ではないでしょうか。
(2023/06/30 辻蕎麦便り)