数ある全国のJA産直施設で売上高トップクラスを誇る東根市の「よってけポポラ」。
主力商品はいうまでもなくサクランボ。
シーズンになると、施設の前に宅配会社の受付専用プレハブが建つくらいですから、販売されるのもすごい量です。
ずらりとならんだサクランボの化粧箱やパックの中から品定めして次々に買い物かごへ入れレジに向かう、これがいつもの光景です。
ところが今年は。
首都圏の知人に季節のあいさつ代わりに送ろうと、平日の11時近くに訪れました。
数百台は収容可能な駐車場がほぼ満杯。
しかも車のナンバーが仙台、宮城を中心に秋田、新潟、首都圏、さらには高知、広島など西日本のものも。
山形ナンバーは10台に1台もありません。
いやな予感が膨らみました。
例年ならこの時間でも、生産者が次々と搬入してくるので品選びにさほど苦労しないのですが、肝心のサクランボがほとんど見当たりません。
空っぽになった販売台の周囲を多くの人が右往左往しているだけ。
時折生産者がサクランボの箱を抱えてやってきますが、売り場に姿を現した瞬間に争奪戦が。
「販売台の上に置いてから手にするように」と再三場内アナウンスが響きます。
この日はあきらめ数日後に再チャレンジ。
9時開店なので、8時30分ころに行きましたが、既に100人近くが行列を作っていました。
まさかここでサクランボを求めるのに開店前から並ぶことになるとは。
列の前後の人たちの話が耳に入ってきます。
「きのうは9時30分に来たけど、もう空っぽだった」「この前の日曜日は300人以上が並んで、場内は身動きがとれなかったって」。
周囲を果樹畑で取り囲まれ、サクランボシーズン以外は比較的静かな施設の前で交わされている会話とは思えません。
何とか目的は果たしましたが、値段の高いのにはびっくり。
1㌔箱で8千円、1万円で驚いていたら、その隣は1万8千円だって。
それでも買い物かごに入るんですよね。
実は行列を作る施設の周囲に、今年は品薄で販売も早めに終了するというお知らせの立て札が立っていました。
昨年夏の高温が原因の双子果の発生に加え、5月、6月の高温続きで、サクランボの熟度が一気に進みました。
そのスピードに収穫が追い付かず、うるんでしまい廃棄せざるを得なくなったということです。
この1年間懸命に手を掛けてきた生産者の心情を思うとやりきれません。
国の地理的表示保護制度に登録されている地域ブランド「東根さくらんぼ」の品評会で最高賞を受賞した1㌔詰サクランボが豊洲市場で145万円の過去最高額がついたり、県が開発した大玉のサクランボ紅王が太田市場で1個10万円で落札されたりと、びっくりするようなニュースも相次ぎました。
一体どんな人の口に入るんでしょうね。
それはともかく、一般消費者が手ごろな値段で季節の味を楽しめる機会が失われるようなことだけは勘弁してほしいものです。
(2024/06/30 辻蕎麦HP)