弥生。
ことしは雪が2月下旬に早々に消えたので、温かくなる日も遠からずと期待を膨らませました。
しかしそうはいきません。
気温はなかなか上がらず、天はのらりくらりと春の訪れを拒んでいるのではないかと恨み節を言いたくなるような1カ月間でした。
朝、目を覚ましても、外が薄暗いうえに肌を刺すような寒さでは布団から抜け出すのも一大決心が必要です。
「毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは」。
「いつまでも寒いね」と語りかけた俳人正岡子規に、お母さんが返した言葉を作品にしたといわれています。
3月中旬になるとこの句が自然に浮かんできます。
この時期、青空のなかに真っ白に染め上げられた月山や朝日連峰がそびえているのを目にすると、じっとしていられない、浮き立つような気分になります。
空の青さも、山の白さも真冬のそれとはどこか色が違うのです。
それが“行動”のスイッチを押すのでしょうか。
わが菜園にある梅の老木も陽だまりになっているところから一輪、また一輪と可憐な花びらが「うーん」といいながら背伸びしてきます。
足元では、雪の下だろうと氷点下だろうとものともせずに成長し続けた雑草が前後左右に旺盛に勢力圏を拡大しています。
ことしもいよいよ雑草との戦いの始まりです。
山形の桜の話は4月に書くものと思っていたのですが、どうやら近い将来はそうでなくなりそうな雲行きに。
インターネットで今年の開花予想を見ていたら、なんと開花日が4月1日、満開日は4月5日とありました。
山形市内の花見といえば4月中旬です。
年によってはゴールデンウイークに満開になり、しかも花びらに雪が舞い降りるといった光景も。
雪国では時としてそういうこともあるのです。
それが4月1日に開花とは。
平年より2週間近く早いそうです。
小中学校の入学式より前に開花するのは想像できません。
「ホントかいな」と思いつつ、山形市の桜の名所霞城公園に足を運びました。
満開の紅白の梅に混じってエドヒガンが五分咲きくらいになっていました。
これなら4月早々に開花し、1500本に上るソメイヨシノがお堀の水面をピンクに染める日も間もなくでしょう。
コロナによる規制が解除され、ことしは以前のような花見の賑わいが戻ってくるということで嬉しさもひとしおですが、その一方で異常気象がここまできたのかと考えさせられると怖さもあります。
桜前線は暖かい九州から始まり、次第に北上しますが、近年はそうでなくなっています。
九州や四国、中国より東京の方が早いのです。
「休眠打破」といって、桜が花を咲かせるには一定期間相応の低温にさらされることによる樹木の目覚めが必要です。
ところが地球温暖化の影響で九州などでは「休眠打破」がおきにくくなっているというのです。
気温がしっかり下がらないので、咲いて良いものやら悪いものやらといった寝ぼけ状態になるのだとか。
こうした状態が続くと、南の方では桜の名所や桜花爛漫の光景が姿を消す可能性もあるといわれています。
日本の大切な原風景が消失していくことだけは勘弁してほしいものです。