2020年5月~6月号 辻蕎麦便り

皐月。

ことしもサクランボの季節がやってきました。
青空の下でルビー色に輝くサクランボがたわわに実り、園地を吹き抜ける風に揺れる姿は爽やかそのものです。
北国に初夏の訪れを実感させてくれる象徴的光景です。

 今月27日に調査が行われたことしのサクランボ作柄見通しが発表されました。
今月上旬の開花期に低温や降雨があったため園地や樹木によってややばらつきがあるようです。
着果数は平年よりわずかに少なく、作柄は平年比94%の「やや少ない」となっています。
最も果実肥大は良好で、品質の良いサクランボが期待できるということです。

 真冬の技術研修会や寒風の中での剪定作業、それに雨による裂果防止のための巨大なビニールテントのセッテング、病害虫の防除作業、摘果と1年中懸命に努力を続けているサクランボ農家。
暖冬で雪がほとんどなかった今年の冬の気候が果樹等に悪影響を及ぼすのではないかと心配されていましたが、作柄的にはそう大きな問題はなさそうで、ほっとしていることでしょう。
東根、天童、寒河江など主要産地では、お客さんが自分でサクランボの木から直接もぎとって食べられる観光果樹園が数多くあります。
6月に入ると、県内外から大型観光バスやマイカーで大勢の観光客が訪れ、初夏の味覚を心行くまで楽しんでいます。
しかし今年は新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、多くの観光果樹園が休園することになりました。
間もなく歓声が飛び交い、笑顔でサクランボをほおばる光景が見られる。
それを楽しみに作業を続けてきた関係者の心境を思うと忍びないものがあります。

 観光果樹園を休園するわけですから、これらのサクランボを収穫、箱詰めして出荷しなければなりません。
これらはすべて人手が必要で、近年は出荷専門の農家でも労力確保に頭を悩ましています。
それに観光果樹園分がプラスされるわけですから、なかなか大変な状況になりそうですが、この難局をなんとか乗り切ってほしいものです。

 わが園地で昨年収穫したジャガイモの中でやや小ぶりなものを種芋にしようと残しました。
例年なら4月中旬に植え付けますが、雨続きで土がべとつき作業は先延ばしに。
気温の上昇とともにわずかに出ていた芽が一気に伸び出し、10㌢から15㌢くらいまでになり、芽の下のほうには根らしきものも次々に発生。
種芋は次第に痩せてくるので長くなった芽を欠き、根らしきものが出ているのだからと土に挿してみました。
これが活着し、いまでは立派な葉を繁らせています。
こんなバカなことは、農家なら絶対にやらないでしょう。
果たしてどうなることやら。
これで新ジャガが味わえるならうれしい限りですが。
当然のことながら種芋もきちんと植え付けてあります。