葉月。
暑い話を書いていると、よけい暑くなるのでやめようと思っても、頭は、というより体全体が自然に「暑いなー」と叫んでしまいます。
この暑さ、本当にいつまで続くのでしょうね。
もういい加減勘弁してほしい。
日本列島に住む大方の人たちが同じ気持ちではないでしょうか。
山形で今夏最高の39度に達した時、はるか昔に体験した40度超えを思い出しました。
燃え盛るストーブの焚口の前にいると熱気で耐え切れなくなる、そんな経験がある人なら簡単に理解してもらえるのじゃないでしょうか。
とにかく自分を取り巻いている空気全体が熱いのです。
あまりの暑さに木にとまっていた蝉がぼーっとして落ちてきたなどという冗談が交わされたくらいですから。
そんな熱風にさらされていると、有名な「徒然草」(吉田兼好)の一節「家の作りやうは 夏をむねとすべし 冬は いかなる所にも住まる 暑き比(ころ)わろき住居(すまい)は 堪えがたき事なり」が繰り返し浮かんできます。
まさにその通り。
寒いなら重ね着をすればそれなりに対応できますが、暑さは裸になっても暑い。
もっとも現代はエアコンなどという魔法の気温調節機があるので、兼好法師と全く同じ感覚にはなれないかもしれませんが。
山形や天童などでは連日35度前後の猛暑が続くなかで、なんと自然の雪景色を見ることができます。
そんなバカなと思われるでしょうが、山形県のちょうど真ん中にそびえたつ月山(標高1984㍍)は依然として残雪を抱いているのです。
全国でもトップクラスの積雪を誇るだけに、急速に雪融けが進んでいるものの、この時季でも下界からはっきりその白さを確認できます。
残雪がある標高近くまでリフトが運行されていますが、その約1㌔下の駅の気温は20度前後だそうです。
うだるような暑さの中でながめている身にとっては、あそこに天国があるといった感じです。
暑い、暑いで、夏はこの先もしばし続くのではないかと思いきや、自然界はいやもう終わりですよ、としっかり季節の移ろいのサインを出しています。
朝顔やキュウリなど“夏物”の葉が次第に黄ばみ、そして早いものは枯れ始めました。
それに代わって秋の草花が元気づいてきています。
水田では、濃緑色の鋭い剣先のような葉だけだった水稲に穂が出たと思ったら、あっという間に頭を垂れるようになりました。
渇水でどうなることやらと心配されましたが、いまのところ順調なようです。
そしてソバ畑では緑色の苗がすくすくと育っており、真っ白い花の大海原を目にする日も近いことでしょう。
今年はどんな新蕎麦に出会えるか、今からわくわくしております。