師走。
「今朝、東京で初雪が観測されました。11月に観測されるのは54年ぶりのことです」。
11月24日、テレビやラジオ、インターネットのお天気関連サイトなどで一斉にこのニュースが流れました。
「えっ、東京に雪。本当に」。
気温は低いものの強い日差しを浴び小春日和の山形で、なんか不思議な光景に接するような感覚でテレビに見入っていました。
周囲が真っ白な中で、このニュースなら「東京も雪なんだ」で済みますが、どこをながめても晩秋そのものだったのですから。
時ならぬ雪で、気象予報士たちがさまざまな解説をしておりました。
その中で強く印象に残ったのは、54年ぶりに東京に雪をもたらした今回のような気圧配置は「38豪雪」の冬に酷似しているということです。
日本海側各地に通常では考えられないような豪雪をもたらした昭和38年の冬。
山形県内でも山間部の集落などが長期間にわたって孤立してしまいました。
ある町にはヘリコプターで救援物資を運んだほどです。
道路などのインフラや除排雪の機器類の機能、技術力は当時とは比較にならないほど向上しています。
それでも降り過ぎれば、対応に苦慮するのは必至でしょう。
普段、屋根の雪下ろしなどをしたことがない平野部がドカ雪に見舞われたらなどと考えるとぞっとします。
とにかく平穏な冬であってほしいと願っております。
12月の半ばになり、山形も一瞬にして白一色に染め上げられました。
きのうまでみずみずしさをアピールしていた畑の野菜も、今はどこに何があるのといった感じです。
しかしこの雪が野菜にさらなるおいしさを加えてくれます。
雪をかぶった野菜は甘くなるといった話を聞いたことがありませんか。
野菜には寒さから身を守る防御機能が備わっているのです。
野菜の細胞は氷点下になると水が凍り、体積が1割ほど増えて壊れてしまいます。
そこで気温がぐっと下がってくると、野菜は凍りにくくするために細胞内のデンプンを糖に変え、糖濃度を高めるということです。
雪の中から掘り起こした野菜で作った鍋物を突っつき、温まった体でシメの蕎麦をたぐる姿を想像してみてください。
蕎麦がいつもより数段美味しく感じられるのは間違いないでしょう。
かぐわしい蕎麦の香りが部屋いっぱいに広がった辻蕎麦の工房では、連日、年越し用の蕎麦打ちに追われています。
皆様が笑顔で召し上がっている光景を思い浮かべながら、より美味しい蕎麦をお届けできるようにと気合を込めてやっております。