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2023年 5月~6月号 辻蕎麦便り

 皐月。
「1日の気温格差が大きいので体調管理に気を付けてください」。
テレビやラジオの天気予報の中で、気象予報士が呼び掛けるこうした内容の注意を耳にすることが実に多くなりました。

5月といえば1年の中でもっとも穏やかで過ごしやすい季節と思っています。
いや正確に言えば「思っていました」かな。
「風薫る五月」がキャッチフレーズになるくらい爽やかなはずなのに、ここ北国の山形で「明日は猛暑日に…」などという予報が流れてくるのですから。
「爽やか」と「猛暑日」はどう考えてもそぐわないでしょう。
実際は最高気温が34.6℃で、猛暑日まではあと一歩及びませんでしたが、それにしてもどう考えたって5月の気温ではありません。
おまけに最低、最高の気温差が20℃以上という日も結構あり、たった24時間の間に早春から真夏までへの急変にどう対応すれば良いのさ、とぼやきたくなります。
体調維持も容易でありません。

そんな暑い1日、高台から山形盆地を眺めたくなり林道まがいの道をドライブしてきました。
山形盆地は南北に約40㌔、東西に10㌔~20㌔あり、田園が広がるなかに街や集落が点在しています。
5月の盆地の光景は、伝説の「藻が湖」に一番近いのではないでしょうか。
田植えの準備のために一斉に水を張られて果てしなく広がる水田はまるで湖のよう。
大昔(何年前とは問わないでください)、最上川は村山市の碁点で堰き止められており、盆地が巨大な湖だったといわれています。
その名残りが地名として伝えられ、東側の際が東根、現在の東根市、西の際が西根、現在の寒河江市西根だというのです。
今ではちょっと場所を思い出せませんが、東根市の山裾には、「荷渡し地蔵」といったお地蔵さんがありました。

科学的には地殻変動によって村山市碁点の堰き止めが解消され、最上川となって水が流れ出し、山形盆地を形成したようです。
人々が住む以前の事象なのでしょうが、湖は一気に消滅したのではなく、徐々に狭まっていき人間が生活を始めたころにも残っていたのでは。純白に輝く周囲の高い山並みに囲まれ、青空を映し出す広大な水田をぼんやり見ていると、古代の人々が木船を力強く漕いで行き来する姿が浮かんできます。
どんな風が彼らの頬を撫でていたのでしょうね。
もっとも「現代の湖」もめっきり減って、新たな白い波を湧き立たせています。
サクランボやリンゴなどの花で、桃などのピンクも混じり咲き誇るさまは桃源郷を彷彿させています。
湖が狭まって、桃源郷が広がるのは目の保養には良いのですが。
その裏にはいろいろな事情があるのでしょうね。

(2023/05/30)

2023年 1月~2月号 辻蕎麦便り

大雪に見舞われ心身ともに疲労困憊状態だった昨年と違い、ことしの山形市周辺の年明けは比較的少雪で推移しています。
元旦の天気予報は余り芳しいものではありませんでしたが、8時過ぎに雲が切れて青空が広がり、太陽がしっかり顔を見せてくれました。
たまたま外にいてこの様子を目にすることができました。
初日の出ではありませんが、雲を押しのけて射し込んでくる強烈な光はなにやら神々しく感じられ、思わず合掌してしまいました。
長引く新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う惨劇と世界的な経済混乱など地球的に人々を苦しめている物事が一日も早く、いや一瞬でも早く治まり解決されるよう願わずにいられませんでした。

降雪が少ない上に、気温も比較的高めだったこともあり、10日過ぎには道路どころか庭からも白い世界が姿を消しました。
ひょっとしたら2020年1、2月のように雪のない冬になる。
除排雪に汗をかくことも無くなるのではと期待半分、植物に与える影響が大き過ぎるかもなど不安半分で空を見つめていました。
わがささやかな菜園では収穫し残した野菜たちが白い衣を脱いで姿を現わすほどに。
雪下の野菜は自らの凍結を防ぐために糖分を創り出すので、より甘みを増します。
これを味わわない手はないとさっそく白菜などを取り入れて鍋物に。
思いもかけないプレゼントで、味がしっかりしているうえに口の中に入れるととろけるような柔らかさ。
あまりの美味しさに酒量もアップしてしまいました。

ところがほどなく「24日頃から10年に1度の最強寒波に警戒を」との天気予報が繰り返されます。
昨年の再来かよ、とうんざりしていたら、「西日本各地で大雪」のニュースが流れた25日朝になっても、ふわっとかぶさっている程度。
鹿児島市の友人に「けさ9時に山形市の積雪が鹿児島市と同じ2㌢になりました。いつもならほとんど雪のない仙台が9㌢。山形市が東北の県庁所在地で最も少ない。初めてじゃないでしょうか。これも異常気象?」とメールを送ったら、桜島の雪景色を添付し「結構降りました。雪に慣れていない南国はいろいろと大変です」との返信がありました。
その後も雪はさほどではありませんが、気温は下がりっぱなし。
連日の真冬日続きで家ごと冷凍庫に入っているよう。
高騰している電気料金がちらつくものの、暖房を高めに設定しないと耐えられません。
もういい加減にしてほしい。
寒波が去ってエネルギー価格を元に戻して、雪国の人たちの共通した願いではないでしょうか。

今年もより美味しいお蕎麦を目指して精進してまいります。
どうかよろしくお願い致します。
(2023/01/31 辻蕎麦)