皐月。
「風薫る」といえば5月を象徴する言葉。
と思っていたのですが、ここ数年、爽やかそのものの「薫るがごとき風」はどこかにいってしまったような気がします。
涼しいというよりやや冷ややかな感じで推移した4月が終わった瞬間、気温は一気に上昇。
夏日どころか真夏日になり、月末には猛暑日一歩手前までに。
身体はまだ春のままなのだから、いきなり真夏日になられてもなかなか変化についていけません。
特段のことをしなくとも、なんか疲れを感じてしまいます。
暑さ続きで今は5月なのだという感覚がいつの間にかなくなり、もう夏になったのではと錯覚する日も。
ささやかな菜園を楽しみにしている身にとって、これは一大事。
毎年のように栽培している定番の野菜の播種の時期を逃してしまったのではないかと気が気でありません。
こんなに高温になったのでは、冷涼な気温を好む野菜の種を蒔いても発芽しないのではないか、発芽しても十分に育たないのではないか。
おまけに好天続きで畑は干上がり、ひび割れさえしてきています。
とはいえ、やるものはやらなければと、側溝からせっせと水を運んで畑を湿らせ、汗をかきかき種まきをしました。
少しはささやかな努力が奏功したようで、黒土の上にぽつぽつと緑の点が現れた時は本当にほっとしました。
家族や親せきに新鮮な味を届けようとやっているだけなので、上手くいかなくても支障はありませんが、露地栽培を中心にしている農家の方々の気苦労はいかばかりかと思います。
菜園で作業をしながら周囲を見渡すと、例年に比べ高い山並みの頂の白さが急激に薄くなっている気がしてなりません。
風薫るこの時季は、その白さが青空にひときわ映えるのですが。
急速に進んでいるであろう雪融けのことを考えていたら、ふと山形県の内陸部と日本海側の庄内地方を結ぶ国道112号線を思い出しました。
月山の麓を通るこの沿線はわが国有数の広大なブナの原生林が広がることでも知られています。
5月は萌黄色のブナの新芽とまだ積もっている雪の白さのコントラストが素晴らしく、あまりの見事さに思わず車を停めて見入ってしまうほどです。
この萌黄色は日を追って濃さを増し、6月には濃緑色になってしまいます。
今月はまだ足を運んでいませんが、果たしてどうなっていることやら。
壮大なスケールで限りなく5月の自然の変化を楽しめるこうした光景が姿を消すことがないよう願ってやみません。
2019年05月30日