平成23年10月22日。どの酒造もこれから酒造りに入る直前の大掃除に取り掛かっています。
酒蔵を、衛生に保ち、かつ安全に作業が出来るように行うとても大事な最初の作業。何日もかけてしっかりと行うそうです。
そんな時期に、加藤嘉八郎酒造株式会社 杜氏 志田 潔さんにお話をお伺いしました。
──大変お忙しいところありがとうございます。
たくさんの方々が働いていらっしゃいますね。
丁度この時期からは、米農家の方々が16名ほど、季節職人として加わっています。
米のことを全て知っている方々が、農繁期を終えて、酒造りに参加してくださっているわけです。
地元の農家の方々が、地元の米を使い、地酒を造る。
全て地元のもので回し、作り上げてきた長年の風習です。
全国の酒蔵は、だいたいこのようなシステムになっています。
──お勤めになられて何年位になるのですか?
平成元年に入社し、平成17年に杜氏になりました。以前は他県で楽器を作る職人をしていました。その後、こちらに戻り、同じ「ものづくり」職人が出来るここで働くことになりました。材料から完成品まで携われる「ものづくり」。どこまでも妥協しない、自分が納得するまでものづくりをすることが出来るところに、仕事の面白さを感じています。
──加藤嘉八郎酒造のこだわり、特徴を教えてください。
海、山の幸に恵まれている庄内のいろんな料理に嫌われない味。端麗辛口で、さらっとした飲みやすさを追求しています。
前に口に入れていた味が残らないように、「キレのよいお酒」を造るようにこだわっています。
それにはまず、米の要らない部分をきれいに削ることから始まります。
『鶴岡市高坂に、専用の精米所があります。』
一年のこの時期しか使用しない何棟もの設備なのですが、雑みの少ない味にするために、そこから手をかけています。米の外側のビタミン、ミネラル、脂肪分を削り取く為に、新米のうちに出来るだけ早く、精米します。そうすると、良質で純度の高いデンブンを使う事が出来るからです。
『吟醸もレギュラーパックのお酒も全て、酵母を培地に入れて管理』
健全に増えているか、酵母を培地に入れて管理しています。ひとつのもろみを造るまで、9回行っています。吟醸もレギュラーパックのお酒も、全て同じ管理をしています。このような管理は全国でも例がありません。何十年間も行っているそのデータは全て残し、蓄積させて、良質で再現性のある酒造りに活用しています。酵母が最後まで健全であると、最後まで元気な醪(もろみ)で搾れるのです。
──全米日本酒鑑評会 金賞受賞「特別純米酒 十水」(インターナショナルサケチャレンジ2013年 最優秀純米(トロフィー)受賞)と、日本全国美酒鑑評会 [2回火入れ部門]大賞受賞(大山 純米吟醸)おめでとうございます。こちらのお酒についてご紹介ください。
『「十水」は、全国でも当社だけしかしていないやり方で造っているお酒です』
水が少ない濃厚仕込みで、肉や油を使った料理に負けない「酸」のしっかりしたお酒の「十水(とみず)」。
従来のやり方ではない、江戸時代の「十水」という仕込みは、酵母が造る「酸」を濃く造るという方法です。地元の「はえぬき」食米を使用し、3年前スタート(玄米10,500kg使い、1万リットル醸造)しました。予想以上に人気を得て、数ヶ月で完売しました。
甘く、濃い味わいで、甘さを「酸」がマスキング。「酸」が甘さをマスキングしています。
4年目の今年は、当初の4倍に増産の予定です。
これからまたどんな形になるか、私も楽しみなお酒です。農家の1件分の収穫の米を使用するので、胃も痛くなる、リスクを伴うお酒なのですが(笑)
特に受賞がうれしかった『大山 純米吟醸』
純米吟醸ですので、米のうまみ「純米酒」、香り「大吟醸」と両方満足しなければならない難しい分野です。この中間の分野で賞をいただけたことは、特にうれしく思っています。
山形県産美山錦を50%磨きました。美山錦の特徴である、すっきりした上品なボディを表現したいと思って造っています。そのスマートな米の特徴が良く出ていると思います。
評価されているお酒は、特に前よりも良く造り上げなければなりません。人は、前に味わったものと同じでは、おいしいと感じませんので、リピーターになっていただくために、さらに美味しい酒造りに燃えています(笑顔)
その他、当社には40種類位のお酒があります。
一般の家で飲んでもらえるお酒の質を、もっともっと上げていきたいですし、
世界に広げていって、もっと違った観点からアイデアをもらえていけたらとも考えています。
当酒造のお酒は、直球しかありません。
ストレートに「おいしい」と言ってもらえるようなお酒造りを続けていきたいと思います。
──大変お忙しいところ、興味深いお話をいただきましてありがとうございました。