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photographed.


呼吸する劇場、そして広場へ
−複合文化施設−

 川西町フレンドリープラザは、1994年8月に開館した劇場と図書館が一つになった複合文化施設である。町出身の作家・劇作家の井上ひさしさんから貴重な蔵書をいただき誕生した遅筆堂文庫は、いまでは14万冊の本が収蔵されている。劇場は712席の中ホールで、演劇公演にふさわしい設計がほどこされている。

 文化会館やホールの事業をいう場合、自主事業ということばを使う。この場合の自主事業とは貸館事業に対し「その施設が自ら主催する事業」をさしていう。

 フレンドリープラザでは「自主事業」を展開するにあたって三つを指針としている。

 指針の第一は、地域住民への優れた芸術作品の鑑賞機会の提供である。これは劇場の大きな役割であり、そのためほとんどの公共ホールや文化会館は年間数本の演劇やコンサートを「買取り公演」する。平成13年に施行された文化芸術振興基本法には「国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、またはこれを創造できるような環境の整備が図られなければならない」と明記されている。どんなところに住んでいようと国民は文化芸術を享受する権利を有する、と初めて法律に明文化されたわけで、たいへん大きな意義がある。



川西町フレンドリープラザ企画係長
1954年川西町生まれ。早稲田大学第二文学部卒業
平成9年から劇場の企画運営のほか「友の会通信」編集を担当。川西町フレンドリープラザ付属演劇学校事務局。
連絡先:
川西町大字上小松1037-1 
川西町フレンドリープラザ
Tel:0238-46-3311
Fax:0238-46-3313

栗田 政弘
masahiro kurita
川西町フレンドリープラザ
masahiro
 kurita

 プラザは開館以来、演劇をメーンに自主事業を企画しており、年間2〜3本の現代演劇を公演している。
 井上ひさしさんが座付き作者をつとめるこまつ座の芝居も年に2本は上演していただいているが、これは山形こまつ座による実行委員会の主催で行われている。来年は、読売演劇大賞に輝く「太鼓たたいて笛ふいて」(主演・大竹しのぶ)が4ステージ予定されており、東北各地からたくさんのお客様においでいただけるものと今から予想している。

 ここ数年は劇団と共健で行う提携公演も増え、盛岡・仙台・新潟という東北地方の公演ルートにのせてもらうことが多くなった。

 自主事業で何をとりあげるか。これはその公共ホールの個性をどうつくるかという問題と深くかかわっている。演劇や音楽はもちろん伝統芸能やそれ以外のジャンルでもソフトのほとんどは東京で生産されており、地方はそこから選ばざるをえない。何を選択するかという視点をもつことが問われる。いいソフトを選ぶことがいい観客の増員にむすびつき、劇場はいい観客に育てられていくからだ。

 第二は、参加と交流の促進である。町では建設基本構想の策定段階からプラザを「情報の集積と発信の場」にしていくという案をもっていた。そのため、当初から自主事業のすべてを「買取り公演」とする考えはなかった。

 そこで平成9年に生まれたのが、川西町フレンドリープラザ付属演劇学校である。校長先生には井上ひさしさんをお迎えした。教頭は秋田市で30年以上にわたり演劇活動を続けている佐藤修三さんで、開講以来毎月の指導をお願いしている。

 身体を使って何かを表現し、感情を解放するよろこびは、だれもが体験できるはずである。これを基本に、住所、年齢、演劇体験の有無をいっさい問わずに学生を募集した。公立の文化施設が演劇学校を開講するという発想は驚きの目で見られ、体験入学時には100人を超す新人が舞台にあがり、芋か大根(?)を洗う状態だった。

 1期2年間の課程で2年目には卒業公演を行った。すでに3期6年が過ぎ、この間78人が修了していった。

 県内外から集まった年齢も職業も違う人々が舞台に上がり、一つの作品をつくりあげていく過程には、苦しさもつらさもある。しかし、演劇という表現形式がさまざまな要素をたくさん含んでつくられていることをまなび、幕が下りた瞬間の感動を味わう体験は、ほかで得られるものではない。

 平成11年からは小学生を対象に子ども演劇教室も開講している。最近、総合学習に演劇をとりいれ成功している小・中学校の事例を耳にする。演劇が音楽や美術と同様に、芸術の一分野として必要なものであるという考えが認知されてきたのだろう。

 演劇学校は、将来さまざまな表現方法をまなびながら自主公演まで行う地域劇団(リージョナルシアター)に発展させる計画である。

演劇学校三期生公演 「ブンナよ、木からおりてこい」  第三は、創造性ある発信である。演劇学校以外にも自主企画公演やワークショップ、朗読ライブなどを随時開催している。ここにも参加と交流というキーワードをおき、特徴ある展開を図っている。アーティストや観客の交流の中から思わぬ方向に発展したり、異種分野の共演(または競演) が生まれる。

 クラシックピアノをまなぶ人々に会場を提供し夏季合宿を続けて4年になるが、昨年はピアニストと画家のコラボレーションを開偉した。若い芸術家たちとの共同企画は、常識の穀をやぶる発想に満ち、これからの新たな可能性とヒントが得られた。

  劇場という閉鎖的な空間を開放し、ロビーや野外劇場、時には図書館をも積極的に舞台化する試みは、異質なものが出合う実験でもある。さまざまな才能や能力をもつ人びとが自由に集まり何かをつくろうとすれば、それ自体が発信性をもち、人と情報を集める磁場になっていく。常に人が出入りすることによって劇場は呼吸し、活性化する。ここから感動の連鎖が広がっていく。

  文化施設の役割のなかで、このところ「アートマネジメント」という用語が使われる。これは、劇場において芸術家と観客、観客と観客の関係をどうつくるかという視座にもとづく劇場の新たな使命であると思われる。

  以上の三つの指針による事業展開の向こうに、何を夢想するか。

  一言でいうなら、広場、つまり新たなコミュニティーの実現である。そこでは自立した個人がゆるやかでしなやかな関係を保ち、演劇や音楽を日常生活の一部分として楽しみ、生きていくために欠かせないものとしてそれらが息づいている風景・・・。

  限られた予算とスタッフの下で「創造と発信」を口にすることは、かなり大それたことかもしれない。だが、少なくとも劇場という現場にいる限り、そのような夢と意志を持ち続けることが大切だと信じている。


【出典:「Future SIGHT20号」(2003年4月発行)】


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