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Mr.e-yama
photographed.


伝統産業をプロデュース

 日本の衣服の原点であるしな織りを存続、普及、発展させたくて、現代のニーズにこたえながら、その特性を生かした商品を開発することに努めている。

 温海町関川に伝わるしな布は、沖縄のバショウ布、静岡のクズ布とともに日本三大古代織りに数えられる。しなの木の樹皮をはぎ、乾燥させ、煮て、洗い、糸にして、機織りとすべて手作業で23の工程を経て1年間がかりで布となる。木を切ること以外は女性たちによる作業であり、しな織りは女性たちが貴重な現金収入を得る道でもあった。布は素朴な色合いで、感触や通気性に優れ、織り目が美しく、軽く、耐水性や繊維が強靭であるなどの特性がある。かつては魚網、野良着、敷き布団など多様な用途があったが、化学繊維の登場や生活様式の変化とともに次第に需要が減り産業としても衰退していった。

 しな織りは山里の人々の山菜採り、農業、林業を中心とする四季の生活サイクルに合った副業であり、山里の人々のポリシーには自然は神からの預かりものという考え方がある。木をすべて切ることはなく、一部は必ず残して自然と共生する生き方をしており、落葉広葉樹林で自給自足していた縄文人の暮らしに通じるものを感じる。しな織りはそれ自体が心の安らぎを覚える素材であるが、深刻な環境破壊から自然と共生する生き方を迫られている現代人にとって、単なる布としての存在にとどまらないものを持っているように思える。森の人・縄文人のDNAが現代に蘇り、人々の心身を癒すために暮らしぶりを省みるよう訴えているようでもある。
有限会社丸石産業代表取締役。1954年12月13日生まれ、鶴岡市大山2丁目17-7。
明治5年創業の呉服店「大山石田屋」の5代目。青山学院大学経済学部卒業。平成2年に「丸石産業」を設立。平成4年に店舗を改築して「庄内染織工芸サロン」を開設、これが鶴岡市都市景観賞を受賞。




石田 誠
makoto ishida
庄内染織工芸サロン
大山地区の「尾浦の里を愛する会」代表であり、大山地区の自然と歴史を収録したビデオ作品「椙尾の禦り」は県視聴覚ビデオ・コンテスト最優秀賞(平成2年)、昭和8年に私費で大山公園を建設した加藤嘉八郎の足跡と大山地区の四季を収録した「大山公園物語」は優秀賞(平成8年)を獲得している。また、鶴岡総合研究所の研究員、庄内博物園構想策定にも参画、「大山学」の確立運動を展開中。
makoto
ishida

 そんなしな織りと私との最初の出合いは庄内ではなくて東京であった。学生時代に駒場の日本民芸館で芹沢鎧介氏が染めたしな布を見た時、それがふるさとの庄内で織られたものであることを知った驚きが重なって大きな感動を覚えた。郷里の鶴岡市大山に帰り家業の呉服店の経営を継いだ後も、しな織りのことが頭から離れなかった。素晴らしい素材であるにもかかわらずお土産品や民芸品の域にとどまっているしな布に現代的な価値を付加して実用品としての市場を開拓することを目指し、呉服店経営の傍ら素材供給者、工芸家、流通業者の3者が一緒に学習することから始めた。

 その一つは、デザインである。伝統的なものは常に時代が求めるものにこたえたから残ったのであり、しな布の場合も現代のセンスに合ったものにする新しい血を注入すれば商品価値が出てくると考えた。二つには、素材の特性を十分に発揮できる商品を開発することを考えた。呉服店の人脈を頼ってデザイナーに依頼し、帽子、バッグ、のれん、帯などのファッション性の高い新しい分野での商品開発に取り組んだ。その帽子を東京・銀座の専門店に持ち込み陳列してもらうことに成功した。その結果、店側の予想に反してどんどん売れ、自信を深めた。

 インテリアの世界にも販路を確保することができた。和紙としな布を使った照明具を開発し、デパートで扱ってもらった。購入した人々からは 「心が休まる」と評価されてデパートの売上増に貢献できた。全国の主要都市のデパートで展示会を開催してきたが、しな織りへの理解が次第に広まっていることを実感している。千葉県の川村記念美術館からは「古代織りしな布・しな布の今と昔」という企画展のプロデュース依頼が舞い込み、しな布の制作工程のビデオ上映、織りの実演、昔の生活用具の展示などを行った。しな織りの普及活動を通して自分自身が成長していくことを感じている。
 わが国には貴重な伝統工芸品が数多く残っているが、その存続が困難になっているものが少なくない。さらに、伝統工芸品は単一の素材で作られるケースは少なく、数多くの付属品を使用する場合が多いが、付属品確保もままならない状態になっており心が痛む。昔ながらの技をそのまま伝えるだけでなく、新しい血を注入して生き返らせる努力が今こそ必要になっているように思う。私は呉服店の店舗を改造して、しな織りと庄内の伝統工芸を全国に情報発信しようと 「庄内染織色工芸サロン」を開設した。鶴岡市大山は匠の町と呼ばれるぐらいに職人が多い町だが、サロンの建物も白壁、漆喰塗り、瓦など伝統的な職人技を取り入れながら大山の町にふさわしい町並み景観にしたいという気持ちがあった。
 庄内には庄内刺し子、竹塗り、磯草塗り、絵ろうそくなどの伝統工芸があり、山形県は日本有数の伝統工芸保有県でもある。また、多岐にわたる分野で新進工芸作家が活躍している。しかし、それらの技術水準がいかに高く、工芸品がいかに貴重なものであっても、その価値を認めて代価を支払ってくれる人がいなければその技術は後世に伝わっていかない。価値を認めてもらうには付加価値の高いものを作り、作る人が誇りに思える環境を整える必要があるように思う。私は顧客との会話の中から消費者ニーズがどこにあるかをつかむ貴重なヒントを得たように思っている。そして、いくら優れた製品であっても流通に乗らなければ価値を生まないことも肝に銘じており、作るだけでなく販路を開拓することも重要である。
 伝統工芸を取り巻く環境は時代とともに変わる。しかし、いつの時代でも、その時代に合った素材の生かし方、時代の感性が求めるデザイン、次代のニーズにこたえる制作技術、ニーズを持っている人を探す販路開拓が必要である。地域に根差しながら総合的に伝統産業をプロデュースすることが伝統工芸を生き長らえることができる道であろうと思う。
【出典:「Future SIGHT創刊号」(1998年5月 発行)】

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